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レビュー一覧 (204件)
あめんぼうさんの投稿レビュー/東温市立図書館
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貸出不可(未所蔵)
(6人)
71. 京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男
西日本出版社 2020.7
花房観音
あめんぼう さんの評価:
京都を舞台としたミステリーを描く女流作家、山村美紗の半生を描いた本。
これを読むと波乱万丈の人生を送った人だったんだなぁ・・・と思った。
もともとは裕福な家に生まれながら戦時中は貧しい暮らしも経験し、結婚して投資で成功、そして小説家を目指す。
華やかでワガママ、正に女王のような人と見られていたが、その影では自信の無さや気遣いがある人だった。
そして、いつも男性にもてていた。
相当に魅力のある人だったんだろうな・・・とこれを読んで思った。
私はこの本のタイトルと作者が花房観音さんという事から官能的な部分もある本なんだろうな・・・と想像していたら全くそうではなく、淡々とした印象の本だった。
正直、物足りなかった。
ノンフィクション作家の書いたこういう本は事務的にあった事を書いていたとしても何故か面白い。
読者が何を知りたいかを心得て、好奇心を少しずつ満たした書き方をしているから。
私が小説家がノンフィクション小説を書く時に求めるのは小説家ならではの書きもの、しかもその作家の色が出ているものなので、それで言うとこれは違うな・・・と感じた。
まあ、どうしたってまだ当事者がご存命なだけに書きづらいというのは分かるし、それが伝わってくる内容だった。
だけど、相当細かい所まで山村美紗という女性について調べて取材もしているのは読んでいて分かった。
私は以前、テレビで山村美紗は結婚しているものの、隣に西村京太郎が住んでいて家が渡り廊下でつながっていて行き来していたというのを聞いた事がある。
長女の山村紅葉のインタビューだったかも。
今も覚えてるくらいなので、変わってるな・・・と思って記憶してたんだろうと思う。
結局の所、西村京太郎とつきあっていたのか、夫と関係はどうか分からないけど、結果を見たら想像ができる。
山村美紗が亡くなって再婚してからも夫は美紗の絵を描いて個展まで開いている。
それを見るだけで夫婦の強いつながり、絆というのがあったのだと分かる。
ただ、影に徹するだけでそこまでこよなく相手を愛するとはならない。
そして、西村京太郎が自分と山村美紗の事を男女の関係があったとして書いた小説、その後の訂正の弁を見ると、どれだけ彼が彼女を愛していたか、複雑な気持ちを抱いていたかが分かる。
結局、男女のこと、夫婦のことは、よく言う事だけど当事者にしか分からない。
そういう分からない男女の仲というのに気遣いしながら、相当な覚悟をもって書いた本だというのが後半の文章からひしひしと伝わってきた。
京都を舞台としたミステリーを描く女流作家、山村美紗の半生を描いた本。これを読むと...
図書
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(4人)
72. ボニン浄土
宇佐美 まこと‖著
小学館 2020.6
あめんぼう さんの評価:
この話には3人の主人公がいて、それぞれの話が進み、後半につながるようになっている。
1つは、江戸時代の船乗りの男性の話。
彼は船乗りとして五百石の船に乗り込むも、船が遭難、何人かの船夫が亡くなりつつ何とか南の島にたどり着く。
そこは一人の日本人男性と異国の人たちが暮らす島で、彼はそこでイタリア人の女性と恋仲になる。
他の2つの話の時代は現代。
離婚をして一人暮らしの男性。
彼は古物商で亡き祖父の遺品を見つけ、それをきっかけに自分のルーツを探り始める。
音楽一家である祖父母と母親のもと、チェロをしている中学生の少年。
彼は一人の同級生の少女と関わった事がきっかけでチェロの音を拾えなくなってしまう。
このタイトルで、最初船が遭難して南の島に漂流したというあたりで、これは不気味なストーリー展開になるぞーと思ってたらいきなり現代の別の話になって肩すかしをくらった気持ちになった。
ボニン浄土というタイトルも何となく不気味だし、多分、恐ろしい風習のある島民たちに囲まれて・・・などと想像していた。
この話はそういう単純なホラー系の話ではなく、見えない人間同士のつながりを感じさせる話だった。
それは、自分の祖先から今につながる縦のつながりでもあるし、現代の人々が知らない内につながっていたという横のつながりでもある。
とてもよく出来た話で読後感も良かった。
不気味というのは唯一、呪いという話がでてくるくらいで、その呪いも人を雇う側が使用人にひどい扱いをした時、自衛のためにあるというもので、利己的な思いだけで人を呪うというのとは意味あいが違う。
そして、その正体が後半に語られている。
自分より目下にも礼節をもった態度で接する事が出来るのなら「呪い」があると思ってた方が良いと思うし、人として尊重しあい、いい関係でいられるなんて、優しい呪いだと思った。
この話には3人の主人公がいて、それぞれの話が進み、後半につながるようになっている...
図書
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(12人)
73. 坂の上の赤い屋根
真梨 幸子‖著
徳間書店 2019.11
あめんぼう さんの評価:
東京の高級住宅地にある、坂の上の赤い屋根のクリニック。
その医院長夫婦が惨殺される事件が起きる。
犯人は夫婦の一人娘とその交際相手の男。
轟書房という出版社ではその事件を特集として取り上げる事となり、改めて事件周辺の人々に聞き込みを始める。
担当者は男性編集者と駆け出しの小説家。
彼らは、法廷画家の女性、犯人の男性が勤めていたイベント会社社長、事件が起きた家の隣家・・・と聴き取りをしていく。
事件の主導者はどちらなのか。
世間では、純粋な女子高生が悪い男に騙されて・・・となっているが・・・。
犯人二人の人間像、殺された夫婦の様子が徐々に見えてくる中、物語の主眼は小説家から法廷画家の女性へと変わる。
たくさんの登場人物が出て来て、細切れに場面が変わる・・・というのは今までのこの作者の本と同じ。
だけど、今まで読んだこの作者の本の中で一番分かりやすかった。
話がどちらかと言うと、一本調子で、だけど単調という訳でなくて・・・。
だからなのか、犯人が何となく序盤に読めた。
何となく変な人が出て来て、変な事をしたり、嫌な感情を抱いたりというのを書いていて、それがおかしみがあり、それで真相や作者の意図が分からなくてもいいか・・・となるのが今まで読んだ本だったけど、この本では妙に響く言葉があった。
それは「環境の蓄積」が記憶という言葉。
人の印象はその人の記憶や性格にかなり左右されている。
記憶喪失になると、それがリセットされる。
だから印象が無くなる。
生活する環境というのは人にとってそれほど重要なんだ・・・と改めて思う本ではあった。
東京の高級住宅地にある、坂の上の赤い屋根のクリニック。その医院長夫婦が惨殺される...
図書
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(4人)
74. 眠れる美女
秋吉 理香子‖著
小学館 2020.10
あめんぼう さんの評価:
カリスマ性のある監督であり、ダンサーだった男性がいなくなり、経営難のバレエ団。
銀行の融資を受け、指導を受ける事となったバレエ団は再起をはかり、世界的なバレリーナを次回の公演で演出家として迎える事となる。
さらに、次の演目の「眠れる森の美女」のオーロラ姫役として、現在プリマとして世界的に注目を浴びている女性を迎えることに。
彼女は今いるバレエ団員の内の二人の幼馴染だが、しばらくぶりに会った二人に冷たい態度をとる。
他の団員たちにも偉そうな態度をとる。
さらに、自分の相手役にダブルキャストの一員となっていた幼馴染の男性を自分のスカウトしてきた男性に代えさせる。
彼女は海外で母親の虐待を受け、過酷な環境の中バレエを続けていた。
その経験からそんな風に変わってしまった。
そんな彼女を主役にすえる事に反発する団員。
・・・と、色々ありつつも開演に向けて一団となるバレエ団。
所が、カラボスを名乗る人物から脅迫と思われる手紙が届き、本当に殺人事件が起きてしまう。
犯人を自分なりに推理して読んでいたけど、見事に外れてしまった。
意外な犯人ではあったけど、それで驚くという事もないし、犯行動機にしてもそれで・・・という感じだった。
読み終えての感想は、とにかくバレエの事が書きたくて書いた本なんだな・・・という事。
序盤のバレエについての描写が生き生きしていて素晴らしかった。
「テレプシコーラ」でもこんな過酷な事、私なら絶対したくない・・・と読んでいて思ったけど、その世界に足を踏み入れるとどっぷりつかって魅了される世界なんだろうな・・・と思った。
カリスマ性のある監督であり、ダンサーだった男性がいなくなり、経営難のバレエ団。銀...
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(9人)
75. 虜囚の犬
櫛木 理宇‖著
KADOKAWA 2020.7
あめんぼう さんの評価:
ビジネスホテルで男性がめった刺しにされ殺害される事件が起きる。
その被害者宅を訪問した刑事たちは隠し部屋に監禁されている女性を発見する。
女性は他にも監禁されていた女性がいて、その女性は以前死んだ、さらに、他にもこの家で殺された女性がいたのだと言う。
過去のトラウマにより、今は仕事を辞めて妹の家事をしている元家裁調査官の男性は、友人の刑事にビジネスホテルで殺された被害者について聞かれる。
被害者は主人公が家裁調査官だった頃、担当した事のある少年だった。
少年は横暴な父親によって虐待を受け、その頃は気弱でとても女性を監禁、暴行するようには見えなかったが・・・。
事件に興味をもった主人公は単独で被害者男性の周囲を探っていく。
そうする中で、事故でなくなった被害者男性の父親を恨んでいた一家の存在が浮上する。
それと別に、複雑な家庭環境の高校生の少年二人の話が途中から描かれる。
一人は義理の母親に虐待を受け家にいられない少年。
もう一人は少女のような美少年で、カリスマ性があるが、サイコっぽい所のある少年。
虐待を受けていた少年は声をかけてきた美少年にどんどん惹かれていく。
ビジネスホテルの殺人事件に異様に興味をもつ美少年の様子を見て、実は彼が犯人なのでは?と思うようになる。
あっという間に読んでしまった。
最近、集中力がなくて本を読むのに時間がかかるけど、この本は一気読み。
上手に読まされたな・・・と読み終わって思う。
ストーリーに惹きつけるのがとにかくうまい。
最初の場面で監禁されているのは誰だろう?と思うし、読み進める内に、本当に殺された男性が女性たちを監禁していたのか?とか、もしそうならその理由は?と思う。
さらに、少年二人の話に場面が変り、この話はどうつながるんだろう?と思う。
・・・という風に引きつけられた分、結末と真相にはイマイチ・・・という感じになった。
そこまでする説得性が感じられなかったのは犯人と、その犯行理由になった「アズサ」という女性とのエピソードが無かったからだと思う。
そこがあればもっと感じる所もあったのに・・・。
あえて書かなかったのは犯人像が少し読めてしまうからかな・・・と思った。
この本では結構な暴力シーン、レイプ、近親相姦というものが描かれているけど、読後感は悪くない。
何故かというと、主人公の男性がこの事件に関わる事によって再生していくという物語でもあるから。
過去の不幸な事件により、心の傷を負って、何年も家に引きこもるような生活をしていた主人公の男性。
そんな人が事件の事を知って、当時の関係者に聞き込みのような事をしていくのは見ていて「すごい・・・」と思った。
そして、行動する事によって自身が知らない内に変わっている。
何年も罪悪感を抱えて仕事まで辞めてしまった主人公だけど、そういう人だからこそ、信頼できる人だと思うし、人の心の痛みが分かる人だと思った。
それで、何もないようにしれーっとできる人が自分担当のカウンセラーなら私は嫌だと思う。
それと、反対の性格のように思える、主人公の妹や友人の刑事。
彼らを見ると、シンプルに健康的に生きる事が素晴らしいと思える。
ただ、そういう人には、この小説は書けないだろうと思った。
ビジネスホテルで男性がめった刺しにされ殺害される事件が起きる。その被害者宅を訪問...
図書
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(3人)
76. そして、海の泡になる
葉真中 顕‖著
朝日新聞出版 2020.11
あめんぼう さんの評価:
バブル期、投資で莫大な金を儲けた女性がいた。
彼女の名前はハル。
ハルは「うみうし様」という神様の言う通り、株の銘柄を選んで買うだけだと言う。
やがて、彼女の周りには金を得たい者たちが集まり、「春の会」という会ができる。
しかし、バブルは弾け、ハルには当時つきあっていた男性に裏金を作らせていたという疑いがかかり、殺人をおかして刑務所に入る事になる。
この物語は、ハルと同じ刑務所にいて仲の良かった女性が、ハルの事を小説にしようと思い立ち、当時、ハルの周りにいた人々に取材する、そのインタビューの様子をそのまま小説にした形になっている。
ハルの幼馴なじみ、親戚の女性、ハルの子供とされる男性、ハルの経営していた料亭の従業員、「春の会」のメンバー、ハルのつきあっていた男性の子供・・・それらのインタビューとハルの刑務所仲間の女性の話が交互に語られ、話は進んでいく。
そこで語られるのは、ハルの生い立ち、事件に至るまでのいきさつ・・・。
途中まで読んでいてずっと、「うみうし様」というのはハル自身の事だろうと思っていた。
彼女の人生の中で都合の悪い人間は必ず「うみうし様」に殺される。
だけど、「うみうし様」というのが神様なら実態が無い訳で、そういうのが実際に殺人なんてできない・・・という事は自然と犯人は本人だろうという事になる。
だけど、この話にはその辺も含めて、「そうだったのか・・・」という真相が用意されている。
だけど、それが全ての話ではなく、そういう真相が無かったとしても十分面白く読めたし、考える所もある話だった。
この小説では、ハル本人の話は出てこない。
本人は既に死んでいるから。
だから、ハルという女性について、周囲の人の語る所から自分なりに想像するしかない。
私からすると、ハルという人は怒りを常に心の中にためていて、そこから自由になるために生きた人だったのだと感じた。
そして、その怒りは常に、強い方に向いている。
自分と同じく恵まれない生い立ちの人には手を差し伸べている。
そこからすると、優しくて人に好かれる人だったのだと思う。
自分の中に怒りがある時、手っ取り早く、自分より力のない弱い者にその怒りをぶつける人が多い。
そうでない人だって事だけで私はこのハルという人が好ましく思えた。
怒りから自由になるのは、その怒りの対象を抹消する事、復讐する事か。
そうでないとこの本を読むと思える。
その方法はたった一つしかないのだと教えてくれている。
また、戦後、バブル期、現在コロナで疲弊している時代と経済をあわせて描かれていて、それが素晴らしくリアルなので物語の中に入って読む事ができた。
これは、いい本だと思う。
バブル期、投資で莫大な金を儲けた女性がいた。彼女の名前はハル。ハルは「うみうし様...
図書
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(19人)
77. 汚れた手をそこで拭かない
芦沢 央‖著
文藝春秋 2020.9
あめんぼう さんの評価:
5話からなる短編集。
「ただ、運が悪かっただけ」
主人公は余命いくばくない主婦。
彼女は夫から、昔、人を殺した事があると言われる。
聞いてみれば、以前勤めていた工務店の顧客の男性に使い古した脚立を売った所、その脚立から落ちて死んだのだと言う。
当時、その顧客の家には、家出して20年ぶりに帰ってきていた娘がいたと言う。
さらに、死ぬ前に顧客は大金を手にしていたと言うー。
「埋め合わせ」
主人公は男性教師。
彼はプールの水を抜くというミスを犯してしまう。
以前同じような事例があった時の事と照らし合わせて弁償しないといけない・・・と思った彼は、他で水が出たままになっていたと見せかけるため細工をしようとするが、そこを同僚の教師に見つかってしまう。
「忘却」
自宅を売り、アパート暮らしの老夫婦。
ある日、同じアパートで一人暮らしの男性が孤独死する。
死因は熱中症で、死亡時、エアコンがつけられてなかった。
実は、彼が死ぬ少し前に男性の電気代の請求書が誤って夫婦のポストに紛れ込んでいた。
妻は認知症の気があり、その請求書を彼に渡すのを忘れていたのではないか、それでエアコンが止まってしまい、男性が死んだのでは・・・と夫は思うがー。
「お蔵入り」
主人公は新人の映画監督。
出世作となるはずの映画の撮影中、その映画の主役である役者が薬物疑惑があるという情報を得る。
映画がお蔵入りになる事を恐れた彼は役者に会いに行き、薬物使用の事実を伏せようとするがー。
「ミモザ」
主人公は料理研究家の女性。
サイン会で、以前つきあっていた年上の男性と再会する。
以前は編集長だった彼は今は落ちぶれていて妻とも離婚、主人公に借金を申し入れる。
彼女は借用書を書いてもらい、お金を貸すが、それが悪夢の始まりだったー。
どの話もさりげない、日常のささいな事をついていて、そんなささいな事から人間の恐い一面が垣間見えるというのが面白かった。
とても繊細な感覚だと思う。
今まで読んだこの作者の本の中ではこの本が一番面白い。
上品で洗練された仕上がりだと感じた。
個人的には、「忘却」と「ミモザ」が面白かった。
「ミモザ」の夫はどういう人なんだろう?
主人公の女性は「優しい人」と言っていたけど・・・。
それが一番気になった。
5話からなる短編集。「ただ、運が悪かっただけ」主人公は余命いくばくない主婦。彼女...
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(8人)
78. 我々は、みな孤独である
貴志 祐介‖著
角川春樹事務所 2020.9
あめんぼう さんの評価:
主人公は探偵の男性。
彼は金持ちの老人からある依頼を受ける。
それは老人の前世に、彼を殺した人物を特定して欲しいというもの。
前世、老人は農民で、水を巡る争いがあり、それに巻き込まれて殺されたと言う。
その場所も、前世の名前も分からない。
そんな途方もない依頼だが、金が必要になった主人公は依頼を引き受ける。
金が必要になった理由は、元従業員を追うヤバいヤクザとメキシコ系のギャングから元従業員の借金返済を迫られたため。
主人公は早々に、依頼調査に見切りをつけて、それらしい話を捏造しようとする。
だが、その捏造した話が奇妙な事に前世の記憶と一致しており、自分も探偵事務所の女性従業員も、その過去の人物の中にいた事が分かる。
やがて、調査をしていく内に、老人にその前世を信じ込ませたらしい占い師の男、その男に関連した怪しい女性の存在を知る。
そして、さらに別の前世の存在も。
彼はヤクザやギャングから逃れながら調査を進めていくー。
何だか始まりも終わりも中途半端な印象の話だった。
始まりが中途半端というのは、この話はもしかして続編?という書かれ方をしていたこと。
終わり方としては、結局の所、調査の結末はどうなったか、金持ちの依頼人のその後、小説家はどうなったかというのがなかった事。
そして、話が一本筋でなく、前世の話というオカルト系かと思いきや、いきなりメキシコのギャングが出て来て相当残虐な事をしたりするハードボイルドな話だったりと定まらない感じだった。
個人的に興味深いのはオカルト系の方で、ゴブリンのような容姿の不気味な女の存在を掘り下げて書いて欲しかった。
世界は一つ。
相手は自分のうつし鏡である。
という話も、この物語の説によると何となくイメージできる。
だけど、あまりに途方もなさすぎてついていけない。
この世の理や宇宙の真実(?)を知りすぎると精神に異常をきたすというのは何となく分かるような気もした。
だけど、何度も生まれ変われるから・・・と、まあ、死んでもいいか・・・とはならない。
結局、今の肉体で痛い思いはしたくないと思うし、個人的にはもう二度と生まれ変わりなんてしたくないと思う。
主人公は探偵の男性。彼は金持ちの老人からある依頼を受ける。それは老人の前世に、彼...
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(9人)
79. 縄紋
真梨 幸子‖著
幻冬舎 2020.5
あめんぼう さんの評価:
主人公は大手出版会社を早期退職し、今はフリーの校正者である男性。
彼は自費出版の「縄紋黙示録」という原稿の校正を依頼される。
その原稿は縄文時代を舞台にした小説で、やたら縄文時代の事について書かれており、時代検証が必要だと思った彼は元同僚で今はホームレスの男性に原稿を見てもらう。
そして、なりゆきでその男性は飼い犬と共に、主人公の家にしばらく住む事になる。
その後、「縄紋黙示録」は殺人犯で今は刑務所にいる女性が書いたものだと分かる。
そして、縄文時代へのトリップ。
そこでは男女は鳥居によって分かれていて、子供を産む女性以外は過酷な状況にあった。
物語は、元同僚、出版社の女性と変わりながら、縄文時代にトリップした世界を描きつつ進んでいく。
この作者の書いたものでは、今まで読んだ中で一番シンプルなストーリーだった。
登場人物もそれほど多くないし、話もそれほど複雑でもないし。
それなのに、読みお終わった後、いつものように何かバカされたような気分になるというのは・・・。
あれ?これで終わり?何か見落としてないか?分かってないんじゃないか?という気分になった。
そして、そういう読後感にも関わらず、訳分からん!と腹が立つ感じにはならない。
結末はどうあれ、書いてある内容にひきつけられて読む事ができたからかもしれない。
何しろ、生まれてからこんなに縄文時代という時代について考えたのはこの本を読んで初めて。
そして、発想の素晴らしさ。
文字、言葉というものの捉え方とか、刺青と現代のコンピューター言語をつなげる発想だとか、イメージしてみるとすごい世界観だった。
過去の縄文時代にトリップしたと思いきや実は・・・というのもなるほど・・・という感じ。
それにしても、これだけ縄文時代、その周辺について詳しく書くというのは大変だな・・・と思ったと同時に、この本の校正は大変だろうなぁ・・・と思った。
小説の中の小説だから空想の世界という事でそれほど正確でなくてもいい?
だとしても、リアル感をもって読めて、書き手の時代に対する情熱みたいなのを感じた。
主人公は大手出版会社を早期退職し、今はフリーの校正者である男性。彼は自費出版の「...
図書
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(4人)
80. 修羅の家
我孫子 武丸‖著
講談社 2020.4
あめんぼう さんの評価:
女性を殺害、レイプしている所を女性に見られた男はその目撃者である女性に暴力をふるうが、いつの間にか彼女のペースに乗せられて、彼女の家に誘われるまま行く事になる。
その家は高級住宅地にある一軒家で、女の「家族」と呼ばれる老若男女が数人いた。
元々、その家は彼らの物だったが、事故で知り合った女にいつの間にか乗っ取られ主導権を握られていた。
彼らは女に洗脳され、女の言いなりに知人に借金を重ね、犯罪を犯している。
その家族の内の一人、長女である20代の女性は同級生の男性と再会し、やがて自分の家がそういう状態であるという事を告白する。
同級生の男性は初恋相手である彼女を救いたいと手立てを考える。
面白くて一気に読めてしまったけど、後半と結末に「うーん・・・」となってしまった。
優子という訳の分からない悪魔のような中年女に洗脳されている、というくだりの方が面白かったのに、後半、急に別の話になってお手軽に終わらせたという印象。
これに似た事件は実際にいくつかあって、知っている人ならこれを読んでいるとすぐに思い出すと思う。
私も実際の事件と照らし合わせつつ、これからどうなるんだろう?この女はどうしてこんなになったんだろう?とワクワクして読んでいたのに・・・。
序盤の洗脳の様子がリアルだった。
被害者に罪悪感を植えつける。
暴力、恫喝でガツンと最初にたたきつける。
たまにアメを与える。
自分で手を汚さない。
ここまでの事はないにしても、私が実際に知ってる、人から搾取する人間を思い浮かべてやり口は同じだな・・・と思った。
完璧なサイコだけど、どんだけ人から搾取しても本人は満たされるという事がないのでは・・・と見ていて思った。
その辺りを掘り下げて書いて欲しかった。
加害者が被害者だったというのはどうにもスッキリしない。
それにしても、これほど悪行の限りを尽くす女の名前が「優子」とは皮肉だな・・・と思った。
女性を殺害、レイプしている所を女性に見られた男はその目撃者である女性に暴力をふる...
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