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レビュー一覧 (204件)
あめんぼうさんの投稿レビュー/東温市立図書館
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図書
(12人)
181. 引き抜き屋 1
鹿子小穂の冒険 雫井 脩介‖著
PHP研究所 2018.3
あめんぼう さんの評価:
引き抜き屋ー今の言葉で言えば、ヘッドハンターとして、はからずも働く事となった女性の話。
主人公はアウトドア製品を扱う会社の令嬢。
彼女は取締役として父親の会社で働いていたが、ヘッドハンティングされて会社にきた役員と折り合いが悪く、武者修行の名目で会社を出されてしまう。
そして、父親の伝手で引き抜き屋として働く事に。
最初に彼女が担当した案件は、有名なアパレル会社で働く女性とカーテン・カーペットメーカーの人事担当者を引き合わせる仕事。
ろくな仕事のノウハウもないまま、最初の仕事をした彼女はその後も、新店舗を出すホテル業の社長と自身の店舗をいくつも持つレストラン経営者、経営不振のスポーツ用品会社と大胆なリストラをしてきた男性の仲を取り持つ仕事をして、引き抜き屋の仕事が面白いと思うようになる。
引き抜き屋なんて古臭い言葉だけど、この本ではヘッドハンターというよりもこの言葉の方がしっくりきてると思う。
この本の中でも語られるように、ヘッドハンターというと、何となく外資系の会社のイメージ、スマートでかっこいいイメージだけど、実際は「お見合いおばさん」のような仕事。
人と企業とを結びつける。
それは最初は自分の人脈から始まって、そこから少しずつ、人の縁で人脈を広げていく。
そして、自身の人を見る目を磨くという事にかかっている。
それは単に優秀な人材をあてがえばいいというものでなく、企業や経営者の求める者を見抜く眼が必要とされる。
割と泥臭い仕事なんだな・・・と思ったし、そこから見えてくる人間関係やそれぞれの思惑や事情も人間くさい。
その人物の学歴や経歴といった字面だけでは決して見えない、その人の裏の一面が見えてくるというのも良かった。
私はこういった企業小説のような社会派の小説が苦手であまり読まないけど、これは引き抜き屋という仕事を通して一人の女性の成長姿を描いており、引き抜き屋という仕事自体も読めば読むほど興味深いもので、それなりに面白く読めた。
書いてある事が興味深いのもあるけど、文章の力も大きいと思う。
読みやすく、登場人物たちもさりげなくキャラが立っている。
この本、このままテレビドラマになりそう。
やはり、書く人によっては、私のようにこんな小説が苦手な人間にも読めるんだなぁ・・・と感心した。
引き抜き屋ー今の言葉で言えば、ヘッドハンターとして、はからずも働く事となった女性...
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図書
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(48人)
182. 朝が来る
辻村 深月‖著
文藝春秋 2015.6
あめんぼう さんの評価:
この本のドラマを昔見た事があって、何となく懐かしいな・・・と思って読んでみた。
だから、読んでいて、「ああ、こんな内容だったな・・・」と思いだしたり、文章からドラマの場面が思い浮かんだりした。
これで見ると、あのドラマは結構原作に忠実に作られていたと思う。
でも、ドラマの方がボリュームの関係か、原作にはないエピソードもあり、ちょっと違う部分もあった。
この物語の主人公は二人の女性。
一人は養子縁組した男児を育てる働く主婦。
タワーマンションの上層階に住み、夫と養子と三人暮らしの彼女のもとに一人の女性が訪ねてくる。
彼女がもう一人の主人公であり、男児の産みの親である女性。
久しぶりに再会した彼女は夫婦に「子供を返して欲しい」と言う。
もしそれが無理なら、お金が欲しいと・・・。
その理由ー彼女がここに来るに至るまで、子供が欲しくてもできなくて養子をとるという決断に至るまでの夫婦の様子が描かれる。
ドラマでは、産みの母親を演じたまだ幼いとも言える女優の演技が初々しくて印象的だった。
子供をいづれ自分の手元から離さなければならない。
その前提で出産を控えてる様子がいじらしかった。
それと同時に、いつも冷静で優しい大人の対応をする、育ての母親の様子にも好感をもてた。
それはこの原作そのまんまだったんだと読んでみて思う。
これを読むと、やはり血のつながりのない子供を育てるというのは、この国ではハードルが高いと思う。
重要な事ではあるけれど、様々な条件が課せられていて、ある程度の子供を育てられる環境、年収、そして若さが求められる。
反対に自分で育てたくても経済的、社会的な理由で育てられない女性。
双方ともに、彼らに対する世間の目は温かいものだけじゃない。
そして、二つの願いは一致しているものの、それを結びつけるのは簡単じゃない。
今回、この本では育ての親の女性が良識のある優しい人だから良い話になっているけど、違うタイプの人なら全く別の印象の話になってたんだと思う。
私がもし、若い女性で、こんな風に自分の事を扱ってくれて、対応してくれたらどんなに嬉しいだろうと思うし、素直な気持ちになれるだろうと思った。
結末に関しては、少し物足りないな・・・といのが正直な感想で、もっと主人公たちのその後が知りたいな・・・と思った。
この本のドラマを昔見た事があって、何となく懐かしいな・・・と思って読んでみた。だ...
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(9人)
183. 「鬼畜」の家
わが子を殺す親たち 石井 光太‖著
新潮社 2016.8
あめんぼう さんの評価:
「厚木幼児餓死白骨化事件」
「下田市嬰児連続殺害事件」
「足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件」
といった、3件の幼児虐待事件を扱ったノンフィクション本。
読む前に、この本がどういうものか大体タイトルで想像がつくし、確実に子供を虐待死させた親たちへの憤りが募るだろうと思ったらそうはならなかった。
もちろん、読んでいて腹は立つ。
だけど、彼らには彼らなりの事情があったという事は理解できた、という内容の本になっている。
もちろん、大前提として、彼らのした事を絶対に肯定する事ないし、許しがたい悪い事をしてるという認識の上で。
3件の幼児虐待事件を見ていると、彼らにいくつかの共通点があるのが見えてくる。
まず、その3件の両親共に信じられない程、まだ子供であるという事。
そして、3件の両親共に、その両親が異常な性格で彼らと異様な関係性であったという事。
まず、最初に取り上げられている「厚木市幼児餓死白骨化事件」は、父親の母親は統合神経失調症で近所でも奇行が有名だったし、下田市の事件の母親の母親、足立区の事件の母親の母親はこの本の作者がインタビューの際、記者が引くような言動をとっている。
まともじゃない親に育てられ、まともな常識をわきまえるという事を教わってない。
特に、2件目の下田市の母親は子供が家の中で出産、中絶を繰り返しても全く気付かず、子供から金を搾取する事にばかりに関心がいっている。
しかも、搾取した金で自分は贅沢放題。
そんな母親を子供たちの母親は嫌うどころか慕っている。
この本は子供たちがどのように虐待され、死に至ったかというよりは、子供たちの親の生い立ち、そしてその親がどういう人間だったのか、という事を書いている。
これを読むと、何となく虐待した親に同情的で、その親の方がむしろ悪者とはなっているけど、多分、その悪者の親たちにもそれなりの親がいたんだろうと思う。
どの親も自分たちが生きていくのに精いっぱいで、子育てする精神的、経済的余裕がなく、それが負の連鎖を生んでいる。
これを読んでいて、私もこんな親にこんな環境で育てられたら同じようになっていただろうと思った。
それと、最初の話、子供を遺棄して白骨化させた親の話は読んでいて、最近読んだ小説を思いだした。
あの小説はこの事件をもとに書かれている。
それは虐待死した子供のある行動ではっきりした。
読む前に覚悟していたほど、読み終わってぐったりとつらくなるという本ではなかったけど、もちろん、実際にあった事を書いてあるので、文章の訴えかける力が強いし、読んでいてやるせなくなったり、しんどくなるには違いない。
だけど、そういうものこそ、目をそらさずに時には見る事も必要なんだと思う。
子供を虐待した親たちを擁護する気なんて一切ないけど、一応、彼らには彼らなりの事情があったし、この本を読まないと、ただ憎しみや蔑みの対象だった、という彼らがただそれだけの存在ではないというのが見えてきた。
「厚木幼児餓死白骨化事件」「下田市嬰児連続殺害事件」「足立区ウサギ用ケージ監禁虐...
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(48人)
184. 罪の声
塩田 武士‖著
講談社 2016.8
あめんぼう さんの評価:
いい話だと思うし、読後感もいい。
だけど、いかんせん、読んでる間中に入りこめなくて、ちょっと読んでは寝てしまい、中々ページが進まなかった。
文章が退屈だとかいう事もないし、ただ単に内容に私が興味をもてなかったからだと思う。
この物語のベースとなっているのは実際に起きた昭和の事件「森永グリコ脅迫事件」。
未解決のままのこの事件をこの物語では「ギン萬事件」と称している。
そして、物語の主人公は二人。
一人は父親の代からのテーラーの仕事を継いだ男性。
彼は昭和に起きた「ギン萬事件」に子供の頃の自分が関わっていたのでは?と思うようになり、事件を追うようになる。
もう一人は雑誌記者の男性。
彼は忘れかけている昔の事件を追うという企画で「ギン萬事件」を担当する事となる。
そんな二人が独自のルートから事件を追う二つのストーリーが後半には一つになる。
読んでいる間、退屈な本だったけど、思う所はある話だった。
「ギン萬事件」により、人生を狂わされた家族ー特に子供について。
当時、子供で、知らず知らず事件に関与する事になった人間は全く何の責任もないのに、一番それによって人生が変えられてしまっている。
それってどうしようもない、その人の背負った運命だったのかなと思うし、そんな中でも人生のどこかで軌道修正するチャンスがあったのでは?とも思う。
また、重いテーマ、ストーリーだったにも関わらず、読後感が良かったのは主人公の人柄によるものだと思う。
雑誌記者というと、特ダネのためならデマカセをでっちあげたり、人が傷つくのも平気という勝手なイメージがあるけど、この本の主人公は事件の被害者となった人への思いやりや気配りをしている。
自分の人生をふいにした、と思っている人もこれをきっかけに良い方向に軌道修正できたらいいな・・・と思う。
いい話だと思うし、読後感もいい。だけど、いかんせん、読んでる間中に入りこめなくて...
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(16人)
185. 七十歳死亡法案、可決
垣谷 美雨‖著
幻冬舎 2012.1
あめんぼう さんの評価:
七十歳になると死亡しなきゃいけないという法律が可決され、2年後に施行される事になった日本。
その法律により、それまでとは意識の変わった一家を描いた本。
宝田一家は、大手企業に勤める父親、専業主婦の母親、寝たきりの祖母、ニートの息子、自活している娘という家族構成。
その中で、寝たきりの祖母の面倒をみるのは母親の役目。
夫も家に一日中いる息子も介護を手伝う事はない。
一時は娘にも介護を手伝って欲しいと願うも、彼女は家を出てしまい、今はヘルパーの仕事をしている。
そんな一家は、七十歳になると死亡するという法案により、その施行を2年後に控え、祖母はあと2年で死ぬのだからと投げやりになり、夫は会社を早期退職し、親友と世界旅行に出た。
2年後の死を前に、祖母は実の娘たちに遺産を贈与しようとするが、その際の彼女たちとその夫の態度により、すぐに贈与するのを見合わせる。
法案が通るまでは嫁に気を遣っていた祖母は嫁にきつくあたるようになり、今や息子のいない時は呼び捨て。
夜中も平気で呼びつける。
そんな姑の介護や勝手な夫、小姑たちに腹を立て、ついに妻は家を出るー。
こういう風にあらすじを書くと、ヘビーな内容かと思うけど、実際読んでみるとそんな事はない。
こんな重いテーマなのに、軽くさらっと読めた。
もちろん、こんな法案は絶対に現実的にありえない話だから・・・というのもあるけど、それを踏まえつつも現実的に書いてある。
現実味のある話だし、文章だけど、それを軽妙に書いてあるな~と思った。
この話のあらすじを見ても分かるように、嫁の周囲・・・特に夫の能天気さにはあきれる。
彼女がいなくなって初めて存在のありがたみに気づく訳だけど、いないならいないなりに何とかしようと考えて行動するようにはなっている。
それなら嫁がいる時にそうしろ、と思うけど、そうはならないんだよな・・・と思う。
一度本当にいなくならないと分からない。
それなら、ちゃんと嫁がガマンするだけじゃなく、こうして欲しいという要求をしたり、自分の考えを素直に言えばよかった・・・と言うと、それでは彼らは変われなかったと思う。
ただ、彼らは救いようもないほどの悪人だとかいうのでなく、普通の人々で可愛げもある。
その辺がリアルだな・・・と思う。
まあ、後半の展開や結末は少しご都合主義かなと思ったけど、それはそれで読後感が良かった。
読みやすくて、深刻になりすぎずにすぐに読み切った。
七十歳になると死亡しなきゃいけないという法律が可決され、2年後に施行される事にな...
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(1人)
186. 蛍の森
石井 光太‖著
新潮社 2013.11
あめんぼう さんの評価:
一気に読み終えた。
初めて読んだ作者の本だけど、書いてある内容に引き込まれたし、文章も読みやすかった。
とても、深く、重いテーマで読んでいてつらくなる所もしばしばあったけど、これは読んで良かったと思える本でした。
主人公は医師の男性。
彼は父親に殺人容疑がかかった事により、仕事と家庭をいっぺんに失った。
父は本当に犯罪を犯したのか、その事件を追う現在の話と、父親の過去が語られる話が入れ替わり立ち替り進んでいく。
その中で見えてきたのは60年ほど前にあった、らい病患者への壮絶な差別と暴力だった。
昔、四国八十八か所遍路をする人々の中には犯罪者や訳ありの人々がいた。
その中に、迫害され、集落から追い出された、らい病の人々がいて、彼らは帰る家もなく、ずっとお遍路を続けていた。
そして、そんな、らい病を患うお遍路さんは「ヘンド」という蔑称で呼ばれていた。
そんな事はこの本で初めて知った。
お遍路さんというと、信仰をしている人々だけがする、というイメージはなく、むしろ暗く、過酷なものというイメージはあったけれど、そんな中にこんな人々がいたなんて・・・。
それでも、当時の療養所に入るよりはマシだったというんだから、どれだけ療養所とは非人道的な所だったのか・・・と思う。
最近、私は小説の暴行シーンとか、虐待シーンとかに食傷気味になっていたが、この本では読んでいて本当に苦しくなって痛みを感じた。
これを読むと人間はどこまで残酷になれるんだろう・・・と思う。
・・・というか、ここに出てくる、笑いながら女子供に暴行したり、らい病の人々を平気で殺すのは人間なんかじゃないと思う。
見た目だけ人間の形をした獣。
彼らの暴力の矛先は常に自分より弱い者に向かう。
どこまでも徹底的に。
罪悪感の欠片もなく。
彼らのしている事も発する言葉も言葉遣いも全てが下品で暴力的で、読んでいるだけで虫唾が走るぐらい醜悪だった。
そんな中、ホッとできたのは、主人公の男性の父親が少年だった頃、そして彼を救った少女の言葉遣い。
彼らはまともな教育も受けてなくて、貧しい劣悪な環境で生きてきた訳だけど、言葉遣いが優し気で可愛らしい。
実際はそうならないかもしれないけど、そこに環境に左右されない人間性とか知性みたいなのを感じて読んでいて心がゆるんだ。
主人公の父親の大事な人々は、ずっと暗い闇の中、泥の中を生きてきた。
そんな中で、見えるという光は本当に、本当に微かなもの。
そうか。
これに幸せを感じるのか。
これさえも幸せなのか。
その生き方を見てグッときた。
こういう話だとタイトルの蛍をやたら場面で出すというのがあるけど、この本ではほんのちょっと触れているだけ。
そのほんのちょっとが、より一層効果的だった。
ちゃんと私にも見えた。
一気に読み終えた。初めて読んだ作者の本だけど、書いてある内容に引き込まれたし、文...
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図書
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(17人)
187. ノーマンズランド
[姫川玲子シリーズ] 誉田 哲也‖著
光文社 2017.11
あめんぼう さんの評価:
失敗した・・・。
読んでいてすぐに、姫川という女刑事が登場するシリーズだと分かり、読む気力が半減した。
以前、このシリーズの本を何冊か読んだけど、どうにも面白いと思えない。
私には合わない。
途中から斜め読みした。
話は今から20年前に行方不明になった女子高生の話から始まり、姫川が追う、女性殺害事件へ。
やがて、姫川がその事件を追う内にたどり着いたのは20年前の事件。
行方不明になった女子高生には当時つきあっていた彼がいて、その男性は今自衛官になっていた。
何か、いつの間にか話が変ってる、という展開だった。
斜め読みしたせいもあるけど、さっきまで女子高生の話だったのに、いつの間にか別の話、別の話、と頭がついていく前に展開していて、それのどれもが話の本筋に必要か?このくだり・・・というのが多い。
これはこのシリーズのファンで、登場人物たちに思い入れがある人が読むと面白い、という類のものだと思う。
そのどちらでもない私には読んでいて話に入りこめず、ただただ退屈でうんざりきた。
珍しく残虐なシーンがないな・・・とそれは評価していたら、それも後半であり。
いくら大事な人とは言え、20年間、彼女を思い、自分の人生を捧げた男性の生き方も健気、純愛という見方はできない。
私は好きじゃなかった。
失敗した・・・。読んでいてすぐに、姫川という女刑事が登場するシリーズだと分かり、...
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(6人)
188. 鵜頭川村事件
櫛木 理宇‖著
文藝春秋 2018.6
あめんぼう さんの評価:
主人公は妻を亡くし、まだ幼い一人娘を男手ひとつで育てている男性。
彼は妻の墓参りのため、久しぶりに妻の故郷である鵜頭川村を訪れる。
妻の生家はその村では有力者の家で、村全体が男尊女卑な風潮の上に、その家の男たちは輪をかけて横暴だった。
それは、嫁だけでなく、使用人として使う村の人々に対しても同様で、村には一家への反感が募っていた。
そんな折、一人の男性が村で殺されるという事件が起きる。
容疑者として浮かび上がったのは一家の末っ子である男。
だが、その事件の容疑者は有耶無耶にされかかった、それと時を同じくして大水害による土砂崩れにより村は孤立状態となってしまう。
その後、商店では売り惜しみが始まり、村の若者たちは自警団を結成。
その自警団は団長の男の扇動により、狂暴な方向へと向かう。
その矛先は日頃の憤懣を抱える先、村を支配する一家へと向かう。
何となく読んでいて入りこめない本で、読んでいる途中にすぐに寝てしまった。
櫛木理宇さんの書いてる本にしては珍しい。
たくさん登場人物がいるために心情が分散されたからかもしれない。
夢中になって読むまではいかないけれど、考える所はある本だった。
まず、読んでいて、この本に出てくる男共が嫌でしょうがなかった。
横暴で、知性の感じられない言動、そのくせいざとなると弱い人間。
それと比べて主人公の子供の愛らしいこと。
醜い男共の中にいて、その無邪気さや健気さが却って際立って見えた。
さらに、最初からおかしいのがもっとおかしくなっていく男共の中において、理性的にふるまう主人公男性や他の青年の姿。
自分の中の獣に負けてしまう人間とそうでない人間が見事に描かれていた。
それと、読んでいて自然と思ったのは学生運動について。
この物語の時代設定は昭和50年代。
学生運動の記憶がまだ生々しく残る時代でもあり、それがこの村の人々にも影響を与えている。
私は昔から学生運動の事がどうにもよく分からなかった。
何であの時代の若者があんな事をしたのか、概要を聞かされてもさっぱり理解できない。
よほど頭が悪いからだと思っていたら歳をとって何となく分かってきた・・・が、やはり何であんな事をしたのか分からない。
ただ、集団心理って恐いと思う。
責任の所在がはっきりしない状況では人間は獣になりやすい。
それも自分は「正しい」という根拠ない信念があればさらに・・・。
折も折で、今オウムの教祖が死刑になり、外は大雨。
この本を読むには絶好の条件が揃って読んだ本だったと思う。
主人公は妻を亡くし、まだ幼い一人娘を男手ひとつで育てている男性。彼は妻の墓参りの...
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図書
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(6人)
189. 虚談
幽BOOKS 京極 夏彦‖著
KADOKAWA 2018.2
あめんぼう さんの評価:
「~談」シリーズの一冊。
タイトル通りに、どこか狐につままれたような、ごまかされたような、そんな気分になる話が9話収録されている。
そのどれもがタイトルは3文字。
相変わらずの作者の作品に対するこだわりを感じる。
「レシピ」
それほど親しくない学生時代の友人の話を居酒屋で聞く男性。
友人は学生時代はチャラ男で、その当時つきあっていた彼女の話を始める。
彼女はつきあっていた時にスイートポテトを作ってくれて、それが美味しかったので友人はまた作って欲しいと言っていた。
所が、彼女の実家が火事にあい、二人は自然消滅、結局彼女の行方も分からなくなった。
その後、友人は別の女性と何人かつきあったが、その度に女性たちは不気味な体験をする。
「ちくら」
明治時代の百美人の一人の写った写真を手に入れた男性たちの怪異体験。
「ベンチ」
お題目を唱えると幸せになると言うおじさんの記憶。
「クラス」
中学時代に亡くなった妹が成長し、おばあさんになって自分のもとを訪れるという男性の話。
「キイロ」
山の上にある中学校に通っていた男性。
その中学校の裏手には崖があり、一応そこからおりられるようになっていた。
同級生たちがそこで何かを見つけてあがめているらしと知った男性はそこである物を見つけて、ある悪戯をする。
それから不思議で不気味な噂が流れるようになりー。
「シノビ」
住んでいる一軒家に忍者が来るという舞台女優の話。
「ムエン」
ややこしい親族関係をもつ男性のもとに一通の手紙が届く。
差出人の男性は自分と男性が血縁関係だと思うという話を始める。
「ハウス」
この実話には一つだけ嘘があるという前置きをして話を始めたノンフィクションライターの女性。
その話とは、女性の友人の体験談で、友人の認知症の父親が亡くなった以後も生きている時と同様に家にいるという話だった。
「リアル」
夢の中で人を殺した男性の話。
どの話も概ね、読んでいると映像が浮かび上がってくる。
文章で映像を立ち上げるというのはすごいと思う。
特にそれが顕著だったのが、「ベンチ」「クラス」「キイロ」「シノビ」。
「シノビ」という話はそれほどでもなかったのに、最後の最後にビシッと鮮やかに映像化してくれた。
考える所があったのは、
「ベンチ」
独善的でそれをおしつける人間って、陰でどれだけの人間に恨まれてるんだろう、とか、人間の運って一定なのかも・・・と思わせる。
「キイロ」
本当にそれがあったのか、どうなのか、ほんの遊び心が招いた出来事がこんな風に実際の生活に影響を与えるなんて・・・。
とにかく、場所の設定がうまい。
これだからこそ、不気味さが増して「本当にあったのかも・・・」と思わされる。
「ムエン」
ああ、本当にこういう人いるよね・・・と思った。
家が養子、養女でなりたっていて、自分のルーツがはっきりしているようで曖昧な家系。
「リアル」
この話で締めくくったのが憎いくらいに巧い演出だと思う。
作中書かれているように、確かにリアルな夢の記憶はもう実体験の記憶と同等のものである、というくだりは確かにそうだな・・・と思った。
他にも、最初の話の主人公の男性の人から相談を受ける時の心情や態度にも「なるほどね・・・」と思った。
こういうのを書く人は極めて普通の感覚をもった人だと思う。
京極夏彦さんの書く世界観は独特で、一種、とっつきにくい変わった世界が広がっている。
だけど、その根底にあるのは一本筋の通った普通の感覚。
普通の感性をもった人が書く、不思議で奇妙な話だからこそ、人を惹きつけるんだろう、とこの本を読んで改めて思った。
「~談」シリーズの一冊。タイトル通りに、どこか狐につままれたような、ごまかされた...
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(3人)
190. クローゼット
千早 茜‖著
新潮社 2018.2
あめんぼう さんの評価:
初めて読んだ作家の本。
どうにも文章が私には合わなかった。
最初は結構面白い話の予感がして読んでたけど、すぐに「うーん・・・」となってしまった。
登場人物が個性的で魅力的な設定なのに、どのキャラもどこか素通りしてる印象。
書いている世界観も個性的で素敵なのに、何故か夢中になりきれない。
真相的な結末が用意されているけど、それも別に無くて良かったのでは?と思う。
主人公はデパートでバイトで働く男性。
彼は幼い頃に親に女性用の服を着せられ、それをからかわれた所を年上の女の子に助けられた、という記憶をもつ。
ある日、スタイルのいいゴージャスな美人と出会い、彼女の職場である服飾美術館に出入りするようになる主人公。
そこには18世紀から現代までの西洋の服が収蔵されていて、その異色な場所に似合う個性的な面々が働いている。
その中に、男性恐怖症の女性がいてー。
ざっくり書くとこんな感じのあらすじ。
途中で斜め読みしたので拾いだした情報だけで書いた。
この本が魅力的に書かれていたのは服について書かれている箇所。
それ以外には結末もとってつけたようだし、登場人物の心情が薄いし、入りこめない話だった。
雰囲気で読む本かもしれない。
何となく読んでいて、「パラダイスキス」を思いだした。
初めて読んだ作家の本。どうにも文章が私には合わなかった。最初は結構面白い話の予感...
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