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レビュー一覧 (204件)
あめんぼうさんの投稿レビュー/東温市立図書館
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(27人)
161. 凶犬の眼
柚月 裕子‖著
KADOKAWA 2018.3
あめんぼう さんの評価:
暴力団、警察と、固く男くさいイメージの本で、多分、あまり好みじゃないだろうな・・・と思いつつ読んだ。
途中までは思ったより面白いと思いながら読めたが、ページ数が残り少ない時に間をあけてしまい、そこから中に入りこめなかった。
一気に読んだら良かったと思う。
主人公は左遷により田舎の駐在所勤務になった男性。
彼はそこで指名手配中の暴力団の会長と偶然出会う。
男の身辺を探り出す主人公。
はからずもそこに二人の心の交流が生まれてー。
「好きなジャンルじゃないけど、まあ読めるな」くらいで読んでいたら後半も後半に、「えっ!これどうなるん?」という出来事があった。
主人公の思惑、彼がこれからどういう行動をとるのか興味をもって読んでいたら、「えっ、そっちか・・・」という内容だった。
私としては肩すかしにあったような気になり、そこでちょっと読書を頓挫したため再読した時はどうにも中に入れなかった。
印象的だったのは刑事と暴力団組長という敵対する存在の二人が同じ眼をしているというような場面。
二人とも狂気をはらみつつ、組織のため狂暴な犬になろうとしている。
正義と悪に分かれる二人のはずなのに、個人としては同じ、というのが皮肉で面白い。
それなのに、これか・・・と、結末と主人公の行動にはガッカリした。
何となく話に登場する女性たちも中途半端な扱いのような気がする。
ジャンル的に好き、嫌いが分かれる話ではあると思うけど、それなりに読める本ではあった。
暴力団、警察と、固く男くさいイメージの本で、多分、あまり好みじゃないだろうな・・...
貸出不可(未所蔵)
(5人)
162. うかれ女島
新潮社 2018.5
花房観音
あめんぼう さんの評価:
「うかれ」とは島の言葉で売春のこと。
タイトル通り、これは売春婦の島に関わる人々の物語。
・・・となると、この表紙からもかなり重たく陰惨な話かと思いきやそんな事はなかった。
それはどうしてかと言うと、多分、この中で描かれている体を売ってお金を稼ぐ女性たちがその仕事をある意味、自分で選んでいるし、嫌々してないからだと思う。
むしろ、そこを通り越して、自分をお金で買った男たちを包み込むような、そんな包容力を感じた。
それは登場人物の一人である女性の名前、マリアー聖母マリアでなく娼婦だったマリアのイメージにつながっているように思えた。
うかれ島で売春婦をしていた母親が事故死した事を知った若い男性。
彼は母親の遺言により、かつて、うかれ島で売春婦をしていた4人の女性に会いに行く。
今も売春婦をしている女性。
公務員と結婚した専業主婦。
有名な作家の愛人である女優。
大企業で働くキャリアウーマン。
その内、会ってくれたのは最初に訪れた今も売春婦をしている女性だけで、あとは殺害されたキャリアウーマンの後輩の女性が彼女代理として会ってくれた。
彼ら3人は現在はもう普通の島になりつつある「うかれ島」に行き、そこで様々な思いを抱き、ある真実を知る事となる。
とにかく読んでいて目まぐるしくいろんな事を考えさせられる話だった。
最初はちょっとした興味で読んでみるかくらいだったけど、内容的には思ったのと違い、ちゃんとしている。
もちろん、内容が内容だけに性描写はあるけど、それは意外にも淡々と描かれていると感じた。
一言で言えば、性を通して男女のサガを描いている本だと思う。
私が読んでいて最も心が動いたのは、売春婦の女性が草食系の男性に対して憎しみにも似た思いをぶつける場面。
何だか、その心情がよく分かった。
自分だって今まで生きてきた中で何も傷がない訳じゃないのに、自分はキレイだと思っていて心で人を蔑んでいる。
そして、それを上手に見せないようにしている。
そういう人間を傷つけたくなる衝撃的な気持ちが理解できる。
客観的に見れば、彼女の行為は理不尽で、母親が事故死した人間にそんな思いをぶつけるなんて・・・となる所だけど、そういう理屈に合わないのが人間じゃない?と思う。
他にも、専業主婦になり、安定した生活を手に入れて幸せだと思っていたら・・・というのも皮肉だと思ったし、他にも皮肉な真相がここには描かれていた。
女性は社会的に生きづらい。
それを感じると共に、それに悲壮感を感じさせないのは、自分で自分の生き方を選ぶという事なんだな・・・と最終的に思う本だった。
「うかれ」とは島の言葉で売春のこと。タイトル通り、これは売春婦の島に関わる人々の...
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(64人)
163. 羊と鋼の森
宮下 奈都‖著
文藝春秋 2015.9
あめんぼう さんの評価:
序盤から斜め読みになってしまった。
この本がどうのというよりも、内容が私には合わなかった。
カリスマ的な調律師に憧れ、自身も調律師になったばかりの男性の話だけど、ピアノや音楽に特に興味もないし、普段ふれてないので、書いてある事がどうにも具体的にならない。
分かる人が読めば「あ~、それはそうだよね」と共感できたり、きれいに表現されてるな~とうっとりなるんだろうな・・・とは思う。
残念ながら私には響かなかったけど、この本がすごく好き!という人もいるだろうな・・・という本ではある。
読みだしてすぐに、タイトルはそのまんまピアノの事なんだな・・・と思った。
ハンマーに羊を使っている、鍵盤、本体は木、そして鋼で作られた森。
そのイメージが美しく、登場人物の名前も「鳥」、「音」がつく名前ときれいに作られた世界観だと思った。
そして、登場人物たちの言葉づかいや言ってる事も観念的で素敵な世界を醸し出している。
・・・けれど、私にはこんな例え話的な話し方を普段からされたらイラッとくるな・・・となったし、現実感がなかった。
もっと若い時に読んだらちょっとは中に入りこめたのかな・・・と思う。
序盤から斜め読みになってしまった。この本がどうのというよりも、内容が私には合わな...
図書
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(63人)
164. マスカレード・ナイト
東野 圭吾‖著
集英社 2017.9
あめんぼう さんの評価:
ホテルを舞台にしたミステリー、マスカレードシリーズ第三弾。
多分、最初の作品だけ読んでると思う。
これが三作目だとは読み終わってから知った。
・・・というくらい、待ちかねたシリーズというほどではなく、内容がさっぱり記憶にない。
今回のもすぐに忘れるな・・・という内容だった。
都内でトリマーの女性が殺害されるという事件が起きる。
その犯人がホテル・コルテシアに現れるという密告文が警察に送りつけられ、以前もホテルで潜入捜査をした経験のある新田がまたフロントクラークに扮し、潜伏捜査をすることに。
コンシェルジュとして働く山崎尚美とのコンビが復活。
彼らが目をつけた怪しい人物は、
ブラックカードを所持する金持ちの男性。
一人で宿泊しているのに連れの男性がいるようにふるまう女性。
不倫をしている男女とその男性の妻。
殺されたトリマーの女性に関係のある男性ー。
客としてホテルを利用する彼らの行動の裏にある事情とはー。
事の真相はページ数がほとんどなくなった後半にダーッと一気に謎解きしたような感じで、それまでは話が冗長気味で退屈だった。
登場人物がきれいにつながっているが、そこまで目をつけた人間がうまい具合に関連性がある、というのも出来過ぎ感があるし。
でもきれいにまとまっていて安心して読める本だとは思う。
事件よりもホテル業務の方が読んでいて興味をひかれた。
一流のホテルマンはお客様に何を言われても「できません」とは言わない。
その姿勢や仕事ぶりに感心したし、プライドをもって仕事をしているというのを羨ましくも思った。
作中に主人公の刑事がホテルマンの男性の事を「この人は刑事でも成功していた」という風に思う場面があるけど、刑事とホテルマンの仕事というのは似ている所もあるな・・・と読んでいて思った。
それは、本の中の言葉を借りると、人の本質を見るという仕事だということ。
それをどう生かすかは職業として違ってくるけれど、だからホテルが舞台なのかな・・・とも思った。
ホテルを舞台にしたミステリー、マスカレードシリーズ第三弾。多分、最初の作品だけ読...
図書
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(6人)
165. 日の名残り
ハヤカワepi文庫 カズオ イシグロ‖著 土屋 政雄‖訳
早川書房 2001.5
あめんぼう さんの評価:
「ダウントンアビー」を見た後に読んだので自然とあの映像と内容が重なった。
ちょうど、あのドラマと時代も舞台設定も重なっていたように思う。
主人公は現在はアメリカ人の主人に仕える執事で、長年忠実に職務をこなしてきた彼は数日間の休日を与えられる。
その休日に、車を使っての小旅行に出た彼は、イギリスの田園風景を堪能しつつ、自分の過去を回顧していく。
尊敬していた前当主のダーリントン卿、執事として見習うべき存在だった父親、共に働いてきた女中頭のことー。
とても分かりやすい設定で、作者の言いたい事もシンプルに伝わってきた。
後半も後半に、ある人物が言った言葉がそのまま、この小説で伝えたかった事なんだろう、と思う。
さらに、主人公が旅行に出て日常から離れ、いつもの自分と違う場所で客観的に自分を見つめ直す。
そして、ある事に気づいて成長し元の場所に戻っていく。
というのも、典型的だけどとても分かりやすい。
晩年といっても、今日、今この時が自分にとって一番新しい瞬間であり、今の自分はこの人生の中で一番若い。
誰かの言葉ではあるけれど、それを物語として見せてくれる事で、さらにイメージの中でも理解させてくれた。
今の私自身にも響いてくる内容だった。
「ダウントンアビー」を見た後に読んだので自然とあの映像と内容が重なった。ちょうど...
図書
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(2人)
166. となりのセレブたち
篠田 節子‖著
新潮社 2015.9
あめんぼう さんの評価:
皮肉のきいた5話からなる短編集。
前半2話は経済的に裕福な人々の悲喜こもごも、後半3話は近未来的な話になっていて、どの話も結末に「なるほど」となった。
「トマトマジック」
セレブな主婦たちの食事会。
ホストは刺繍教室の講師をする主婦で、集まった女性たちを心の中で値踏みしている。
トマトの代わりに使ったドライトマトを食べた事で彼女たちに思いがけない出来事がー。
シニカルで皮肉のきいた結末。あれだけ心の中で女性たちをバカにしていた主人公が一番俗っぽいというのが何とも笑える。
「蒼猫のいる家」
主人公は猫嫌いのキャリアウーマンの主婦。
家族は彼女が猫嫌いなのを知っていて猫を飼い始める。家に自分の居場所がなくなったと感じた彼女は不倫をするがー。
不思議な結末のようだけど、何となく分かる。犬より猫の方が愛情に関して純粋かもしれないな・・・と思った。自分の世話をしてくれる人、自分に利益のある人よりも自分の感性で人を選ぶ。私は特に犬も猫も好きじゃないけど、何故か犬に吠えられ、猫には相当人見知りの猫にも好かれる。何となくその様と重なった。
「ヒーラー」
「吹き流し」という深海魚が世の中で流行する。
女性たちはその粘液で美しくなり、男たちはその魚で性処理をする。
やがて、それは世の中の仕組みに大きく影響を与えるまでとなりー。
こんな魚、本当にいそうだな・・・と思う。シニカルながらコミカルな話。
「人格再編」
高齢化社会において、老人たちの人格を人格者に再編するという取り組みが始まる近未来の話。
これを読んで「時計じかけのオレンジ」を思いだした。世の中のためになるものでも、その人らしさが無くなるというのはどうなのか。ああいう人間や年取って老醜をさらすという事も意味がある事か・・・と思わされる話。
「クラウディア」
借金取りに山中に捨てられた男性。
土に埋められた彼のもとを付き合っていた女性の飼い犬であるアフガンハウンドのクラウディアが追ってきて救う。やがて、男性と犬は山小屋にたどり着き、不思議な関係性の生活が始まる。
この話は別の話とはまた毛色が違う。犬が最初は主人公に服従していたのが、野生の本能が呼び覚まされ、だんだん主従関係が変ってしまう。
そのまま話が続くのかと思いきや、また別の展開になり、ドタバタ劇的な話だった。
文章は面白くないが、話の筋と結末は面白い。
様々な人間を生臭く、ちょっと斜め目線で描いている。
皮肉のきいた5話からなる短編集。前半2話は経済的に裕福な人々の悲喜こもごも、後半...
図書
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(11人)
167. ツキマトウ
警視庁ストーカー対策室ゼロ係 真梨 幸子‖著
KADOKAWA 2018.7
あめんぼう さんの評価:
いつもと同じパターンだった。
登場人物がやたらと出てきて展開が次々と変わる。
そして、途中から誰が誰なのか分からなくなり、前の話を把握しきれないまま読み進めてしまい、結果、分かったような分からない感じで終わってしまう。
この本はプロローグから始まり、7話に分かれた話の後、追記で締めくくられる。
読み終えた後に最初を読み返すと、「ああ、そうか。あの人ってこうだった・・・」となった。
それくらい目まぐるしく登場人物が出てきて、一気読みしたにも関わらず最初の方は覚えてない。
プロローグは、ある小説の復活プロジェクトに加入して金をまきあげられる主婦の話。
彼女は小説家にストーカー行為をされて、「警視庁ストーカー対策室ゼロ係」に相談に来た。
次の話「ミュール」はナオコという女性と再婚した男性の話。
ナオコは以前「かっちゃん」という男性とつきあっていて、彼にストーカーされていたと言う。
そして、次の話は元カレからリベンジポルノの被害を受けたという女性の話。
次は、その加害者だという男性の話。
・・・と続いていく。
途中からいつもの如く、把握するのを投げてしまった。
全部の話と登場人物がちゃんとつなってるんだろうか。
それすらもはっきりと分かってない。
ただ、読んでいる時は面白かった。
登場人物の心情や行動がちょっと変わっていて、笑える。
ふと思ったのは、この話は常にストーカーがキーワードで、どの話にもストーカーが登場するけど、それと別にサイコパスについての記述もある。
サイコはストーカー行為をするんだろうか?
って事をふと思った。
人を人として見ない、自分の利害しか考えない人間がストーカーなんて、人に対して執着する事やリスクの大きい事をやるのかな?
この本を読んで初めてそんな事を考えた。
いつもと同じパターンだった。登場人物がやたらと出てきて展開が次々と変わる。そして...
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168. ゼロ・アワー
中山 可穂‖著
朝日新聞出版 2017.2
あめんぼう さんの評価:
ガッカリした。
この作者の本を読むのは2冊目。
先に読んだ本が良かったので、ある程度期待して読んでいたら、前に読んだ本とは全く違う雰囲気だし、同じ作者が書いたものなのか?くらいに文章に特徴が感じられなかった。
この本の内容をざっくり書くと、
主人公は小学生の頃に殺し屋に両親と弟を殺され、自身も殺し屋になり、家族を殺した殺し屋に復讐するというもの。
身よりのなくなった彼女はアルゼンチンに住む祖父の元に引き取られ、元殺し屋の祖父より暗殺方法を学ぶ。
そして、殺し屋の所属する組織をつきとめ、自身もその組織の殺し屋として働き、信用を得て復讐を果たすべく動く。
というもの。
これだけでも全く現実感のない設定だと思う。
海外に住む祖父がたまたま殺し屋だった。
そうでなければ、プロの殺し屋をどうやって殺すつもりだったのか。
この話ではタンゴについて色々と書かれているが、それが書きたいためのアルゼンチンという設定か?とも感じた。
かなりご都合主義なストーリー展開だと思う。
また、前半何故か両親を殺した殺し屋と彼が連れ去った飼猫の交流の様子がくわしく丁寧に書かれているが、後から考えてあれは必要だったのか?という気がする。
その辺の文章を読んで、殺し屋業をしているものの、人間味のある男性だという印象を受け、どうしても彼が憎めない、そういうのが後々の展開で生きてくるんだろうと思いきやそうでもなし。
前半に登場した女刑事が結末にも登場するのかと思いきやそれもなし。
大体、家族を殺されたからと言って、自分も殺し屋になり、組織の信頼を得るためだけに何の関係もない人々を殺すというのは本末転倒だと思うし、そういう事をする人間に嫌悪感を感じた。
最初に読んだこの人の本は女性の同性愛を描いた話で美しく繊細な文章に酔わされたが、この本ではそういうのはなく、何だか誰が書いたのか分からない特徴のない文章だと感じた。
ジャンルもハードボイルドというほどでもなく、ミステリーでもなく、恋愛小説でもなく・・・とにかく、どこも特徴がない。
主人公の女性にも特に思い入れを感じず、中に入って読む事ができず、度々中断したり、後半は斜め読みで何とか読み切った。
ガッカリした。この作者の本を読むのは2冊目。先に読んだ本が良かったので、ある程度...
図書
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(1人)
169. コクーン
葉真中 顕‖著
光文社 2016.10
あめんぼう さんの評価:
コクーンとは繭という意味で、この本ではシンラという宗教団体の本部組織の名称という事になっている。
この物語はそのシンラに関係した人々の物語。
シンラの信徒に子供を殺された女性。
シンラの教祖が幼馴染の男性。
シンラの元信徒とその家族ー。
彼らの共通している事は黄金の蝶に導かれるということ。
黄金の蝶が導いた先にあるものとはー。
途中まではっきりとストーリーを把握していたけど、だんだん雲行きが怪しくなってきた。
それは登場人物たちが自分とは違う人物の夢を見る。
という設定が途中から加わったから。
それからはこれは誰の話なのか?
これは誰だっけ?
となってしまった。
そんな訳で読み終わって分かったような分からないような感じになったものの、それはそれで良かったと個人的に思う。
まるで私自身も夢を見ている中で読み終えたという感じになったし、作者が言いたい事は何となく伝わってきたから、それで十分かな・・・と思う。
とにかく、不思議な読後感の本だった。
登場人物を導く蝶というのは彼らを時空や人物を超えて体験させる。
その体験を通じて彼らは、もしあの時ああしていれば・・・、私なら・・・、と「if」を体験する。
そして、登場人物たちは見えない糸でつながっている。
これを読んで、ただ喫茶店で会っただけ、駅で見かけただけという人間が自分の人生に実は関わっているかもしれない。
そして、あの時、ああだったら、こうしていたら・・・というのも、結局は何か目に見えないものに操られている人間の妄想なのか・・・とも思える。
この本では近親相姦やレイプといった衝撃的な事が多々書かれているが、それらは読者の関心をひこうと奇をてらって書いたものでないというのははっきり分かる。
この本にそれらの描写は必要だし、だからこそ伝わってくるものがあった。
むしろ、淡々と、こなすように、静かにそれらを描写していると思う。
内容が内容だけに明るい話ではない。
だから、私がこの本を読み終えた直後に感じたのは見当はずれな感想だと思うけど・・・
私は結果が幸せならいいということか・・・と思った。
もし、そこに至るまでに様々な事があったにせよ、最終的に自分が納得して幸せだと感じられるなら・・・。
黄金の蝶という設定が鮮やかで魅力的で不思議な印象を強くしている本だった。
コクーンとは繭という意味で、この本ではシンラという宗教団体の本部組織の名称という...
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(12人)
170. 絶叫
葉真中 顕‖著
光文社 2014.10
あめんぼう さんの評価:
初めて読んだ作者の本。
期待せずに読んでいたら意外にも面白く、惹きつけられてあっという間に読み終えてしまった。
この物語の主人公は二人の女性。
一人は自宅アパートの一室で自殺した女性。
もう一人はそれが自殺なのか他殺なのかを探る女刑事。
自殺した女性の話は彼女の生い立ちーつまり過去から、刑事の話は現在から彼女の過去を探っていくという形で時間をさかのぼって描かれている。
そして、その二つの話が彼女の死の真相をもってつながるという形式になっている。
二人の女性は過去に失敗した経験があり、それがトラウマになっている。
特に、亡くなった女性は失敗つづきで人生ずっと下降線をたどっている。
人間の最初に躓くと中々そこから這い上がる事は難しい。
生まれて最初の人間関係はほとんどの人は家族だと思うけど、その家族とうまくいかないという記憶はその後の人生に大きく影響する。
そして、成長する中で自分を変えられるような人と出会わなければずっとそれが尾を引いてしまう。
亡くなった女性は最初はどこにでもいるような平凡な少女だったのに、家庭環境から彼女の人生は狂ってしまう。
その後に出会った人間も彼女を利用する人間ばかりで、彼女を傷つけるばかり。
この本のタイトルは「絶叫」だけど、読んでいて思ったのは、この自殺した女性はほとんど声をあげていないという事。
理不尽な事をされて怒りを覚えてもそれを口に出して言う事がほとんどない。
だから、彼女の心の中には絶叫が常にこだましていたんだろうと思う。
私も言いたい事が言えず、やりたい放題やられる方だからよく分かる。
でも、私の場合はどこかで堪忍袋の緒がブチッとキレて相手にぶつけて、そして全てから逃げたり、切ったりして失う。
そこが、この女性とは違う。
彼女は自分が手にしたものを何とか失わまいと必死で生きている。
この話は自殺女性の過去を語る話は「私は」でも「陽子は」でもなく、「あなたは」と語られている。
それを見て、「ああ、この女性に自分自身を重ねて見よという事かな」と思って読んでいたら、そうでない真相が隠されていた。
それはこの話の最後の最後に分かる事で「ああ、それで・・・」と思った。
結末としては人によって取り方が分かれると思う。
人によって希望を感じる人がいるかもしれないけど、私はどうにも明るい未来や希望を感じられなかった。
自分で未来を切り開いたとも言えるかもしれないけど、ここから人間変われるだろうか・・・と思う。
初めて読んだ作者の本。期待せずに読んでいたら意外にも面白く、惹きつけられてあっと...
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