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レビュー一覧 (48件)
子門さんの投稿レビュー/筑前町図書館
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図書
(14人)
11. 毒島刑事最後の事件
[「作家刑事毒島」シリーズ] [2] 中山 七里‖著
幻冬舎 2020.7
子門 さんの評価:
本書の内容は、言ってしまえば最凶Vs最悪の対決!
どちらがどうでもいいワケで、要はどちらが勝利しても、ロクでもないことに変わ
りはないのです(笑)
毒島刑事のお話はすでに一冊刊行されていますので、僕など「あ、もうこのシリー
ズ、終わってしまうのかな?」てな具合に少しへこんだものですが、いやいやどうして、
ご安心ください。じつはこのタイトル自体、少しヒッカケなのですネ。
本書はいうならば、「エピソード・ゼロ!」
毒島刑事としては最後の事件簿であり、同時に「作家刑事毒島誕生秘話」でもある
のです。
それなりに、楽しめたストーリーではありました。
ただ、今回の敵役、「教授」ですか?あまりにもあっさり退場しすぎでは?
ホームズのライバルであるモリアーティ教授あたりを見習って、いま少しねばって
ワルさしてくれてもいいのに?
そんな不満があったンで、評価は星四つ・・・です。
本書の内容は、言ってしまえば最凶Vs最悪の対決!どちらがどうでもいいワケで、要は...
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図書
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(5人)
12. ウクライナ戦争
ちくま新書 1697 小泉 悠‖著
筑摩書房 2022.12
子門 さんの評価:
過日、「西日本新聞」のコラム「春秋」にこんな一節があった。
「戦争とは爺さんが始めて、おっさんが命令し、若者たちが死んでゆくもの」
ウクライナ戦争にあてはめると、プーチン氏を、爺さんというのは流石に気の毒
とは思うが、かの戦争が現在進行形で生んでいる惨禍を考えると、笑いもひきつ
るというもの。
著者の小泉悠氏は、1年を越した今回のロシアによるウクライナ侵攻を本書で
「第二次ロシア・ウクライナ戦争」と呼ぶ。2014年に始まったロシアによる
クリミア半島の併合を「第一次」とする捉え方だ。そういうとらえかたをすると
色々と理解がしやすい面があるらしい。
後世からみて、2022年を象徴する人物はウラジミール・プーチンと、ヴィ
ロディミル・ゼレンシキー(本書の表記)の二人となるのではないか。
それぞれに背負っているモノがあって、とくにロシアのプーチン氏となると、単
純に悪党呼ばわりすればよいかというと、そうでないから、余計に始末がワル
い。本書でも何カ所か指摘があるけども、プーチン氏が示す、自立できる存在で
なく、他者からコントロールされて動く大衆への侮蔑・嫌悪、言い換えると自由
意志への懐疑とでもいったらよいのだろか。どうやらソレがプーチン氏の民衆に
対する見方であるらしい。KGB職員だった職業柄培った見方なのかどうか、不
明ではあるのだが、ウクライナを自立できない国として対応する彼のあり方とも
関連がありそうに思われる。
第二次ウクライナ戦争がプーチン氏の予測を覆し、長引いている要因のひとつに
ゼレンシキー大統領の存在があって、開戦前はともかく有事の際の指導者はかく
あるべし!と「皆が思う通りに彼は振る舞ってみせた」(114ページ)
ロシア軍侵攻の中、ウクライナの地にゼレンシキーが踏みとどまって抗戦の指
揮を執り続けたことがプーチン氏の最大の誤算だった。元俳優で大統領役でもっ
て人気を博し、政界へ転じた異色の経歴の彼であるが、ライトノベル風にいうな
ら、ゼレンシキー氏は理想の大統領を演じているのではないのか?そんな妄想さ
え沸いてくる。
現時点でもっても、この戦いはいつ終わりをむかえるのか、不透明である。最
悪の場合、人類の未来が「メトロ2033」(ドミトリー・グルホフスキー)の
世界へとつながっている可能性さえ否定できないのだから、怖いものがある。
本書を通読して好感を抱いたのは、予測が外れたときは潔くソレを認め、また不
明なことは素直にわからないとする小泉悠氏の姿勢である(227ページ参照)
と同時に、戦慄したのは、筆者が想定した状況のひとつ。すなわち、わが日本
が国外勢力からの侵攻されたと仮定する。世界からのウクライナへの軍事支援
は、かの国が最初の一月を耐え抜いたこそのものであって、日本に同じことが可
能なのか?著者は本書でそんな問いかけもされている。我が国の政治家がよくク
チにする「専守防衛」の実態が問われているのであるけども、さて、どんなもの
だろう?
(注)「メトロ2033」(ドミトリー・グルホフスキー)小学館
今からおよそ10年まえに書かれたロシア人作家によるサイエンスフィクショ
ン。核戦争後わずかに生き残った人々がモスクワ地下鉄の各駅に共同体をつくっ
て争闘、もしくは共存している姿を描いた作品。発表の時点から20年後を想定
した小説であるけども、作者もロシアによるウクライナ侵攻などがおこるとは予
想だにしなかったと思われる。
作者のドミトリー・グルホフスキー氏は現在、他国に亡命中。彼の作品はロシア
国内の書店にて「外国スパイ グルホフスキー」とのレッテルでもって売られて
いるとのこと。
(「あるロシア女性の手記」2023年3月20日付け西日本新聞夕刊 )
過日、「西日本新聞」のコラム「春秋」にこんな一節があった。「戦争とは爺さんが始め...
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図書
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(9人)
13. 図書館の殺人
青崎 有吾‖著
東京創元社 2016.1
子門 さんの評価:
裏染天馬という名の引き籠もり体質の高校生名探偵が活躍するシリーズ第三弾!
主人公たちが通う風ヶ丘高校からほど近い街の図書館で、殺人事件が発生する。
その被害者は、事もあろうに、山田風太郎「人間臨終図巻上巻」(函入り初版
本)でもって撲殺されていた・・・。
ミステリ史上、本が凶器というのは先例があるのですが、本書を最後まで読んで
も「人間臨終図巻」にこだわる理由が見当たりません。この本でないといけない
という必然性がないのです。
この点は、瑕疵といえば、そうなるでしょう。
そもそも、「人間臨終図巻」でもって人間を殴打して死に至らしめることが可能
なのか、どうか?ぼくの家の本棚にもその本はあるのですが、でもって一応試し
てみたのです。たしかにそれなりに痛かった。さりながら、鈍器としてつかえる
かというと、ちょっと弱い気もするのです。
いますこしのインパクトが欲しい。
それゆえに、ぼくは「特装版デルフィニア戦記第一巻」(中央公論社2019)
を推します。425ページの「人間臨終図巻上巻」に比較して、「デルフィニア
戦記」の方はじつに661ページ、撲殺武器としては万全です。
いざというとき、お薦めします。
裏染天馬という名の引き籠もり体質の高校生名探偵が活躍するシリーズ第三弾!主人公た...
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図書
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(1人)
14. 世界はおわらない
ジェラルディン マコックラン‖著 金原 瑞人‖訳 段木 ちひろ‖訳
主婦の友社 2006.3
子門 さんの評価:
「ノアの箱舟」ってのは、聖書の数あるエピソードでも有名なもののひとつで
あるが、その航海中の出来事というのはあまり知られていない。
登場人物は、ノアとその妻アマ、長男セム、その妻バセマト、次男ハム、その
妻サライ、三男ヤフェト・・・っていうか、ノア夫妻と三人の息子たちは聖書
にその存在が確認されるようだが、セムとハムの妻たちはどうなのか?ま、い
ても不思議ではない。だけど、末娘のティムナは作者の創作だろう。でもって
末娘のティムナが主な語り手として、物語は展開する。
ノア一家総出でもって、長い年月をかけて完成した箱船。その用途について、
神の啓示をうけたノアはともかく、近所に住む人々たちとしては「一体、なに
やってんだ?」と不思議に思っても当然である。嫌がらせは論外としても、一
家の精神状態を疑ってかかるのはムリのない話。なにしろ神からの洪水に関す
る情報をノアが非公開にしているのだから、ある意味自業自得といえる。現代
日本で言うなら、新興宗教にハマった一家というのがノアに対する周囲の印象
であった。それでも子ども同士は仲良くするケースもあったりするもので、三
男ヤフェトにはアブラムという友人がいたし、サライにも親友たるツィラがい
た。が、洪水の到来で、そうした関係は一変する。子孫をのこすという目的か
ら、ヤフェトはアブラムを見すてることを強要される。そしてツィラにいたっ
ては、ヤフェトの妻候補ということで、ノア一家に拉致され力づくで箱船に連
れ込まれてしまうのだ!
一気に不穏な空気となったこの物語ではあるが、まだまだそんなモノではすむ
ハズもない。洪水が押し寄せ、箱船が漂いだしたその周辺に、人々が助けを求
めて流されてくる。で、義人たるノア一家、そんな人々を救助するかと思いき
や、なんと見すててしまう!いやそれどころか、長男のセムなどは箱船に取り
すがってくる人たちを棒などで打ち払うありさま!
むろんのこと、箱船のキャパシーに限界があるのだろうから、間違った行動と
もいいきれない。そもそも箱船を造ったのはノア一家であって、周囲の人たち
は何の寄与もしてないしネ。文句をいわれる筋合いはないといえばそうなのだ
けど、だとしても、他者を排除するとき、少しは躊躇いをみせたり、苦悩して
みせろ!と、読者としては言いたくなるのだ。ノアなんて、そんな惨劇を横目
にしながら、神へ祈りを捧げているのだから、その神経を疑う。ホントにコイ
ツら、正義の人なのか?
むろん、箱船に寄ってくる人間たちがすべてマトモであるハズもなく、中には
海賊まがいに乗っ取りをたくらむ輩はいた。が、大半はごく普通の人々であっ
て、中には船でもって洪水をのりきろうとした人々もいて、そんな彼らはノア
一家に対して善意でもって呼びかけをしてくるのだ。が、ソレを一切無視する
ノア一家(ていうか、ノアと、長男セム、次男ハムがマトモじゃない!)の行
く末が本気で心配になってくる。
狂っているというしかないノア一行なのだが、まっとうな人間もいるワケで、
三男ヤフェトと末娘のティムナ、そして拉致されてきたツィラの存在が読者に
とっても救いとなる。この三人、箱船の外壁に流れ着いた母親と少年と乳児を
発見し、保護しようとする。残念ながら母親は助けることができなかったけど
も、子どもと乳児の二人は無事に箱船の奥深く連れ込むことができた。このこ
とがノアや兄たちに露見すると無事にすむとは到底思えないワケで、隠し通そ
うといろいろ画策するのだ。が、その苦労は並大抵のものでなく、たとえば乳
児は夜泣きなどするワケで、ソレに気づいたノアが不審を覚えたりして、そん
な緊迫感がストーリーの後半部分をいやがうえにも盛り上げていく。
加えていうなら、箱船内部の環境劣化も物語にインパクトをあたえているファ
クターである。人間はむろん、動物たちの食糧の不足、病気の蔓延、船内にた
まっていく糞尿をふくめた廃棄物の増大、空気の汚染、外壁の破損からくる水
の流入等々・・・閉鎖環境における人間集団の生存というのは、現代科学をも
ってしても至難の業というか、破綻するのが実証されているので、ムリのない
ことかもしれないが、よくこんな箱船なんぞに運命を託そうとしたものだと、
呆れるしかない。
だけども、そんなお話もさいごはめでたしめでたし、で完結する。読者の一人
として安堵の思いであったが、そのキー・パーソンが、なんと、「あの人」で
あったとはネ!思わず最初から読みなおしてしまった。
楽しめた一冊。お薦めする。
「ノアの箱舟」ってのは、聖書の数あるエピソードでも有名なもののひとつであるが、そ...
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(32人)
15. 掬えば手には
瀬尾 まいこ‖著
講談社 2022.7
子門 さんの評価:
主人公がエスパーなのか、どうか?中学時代の三雲、高校時代の吉沢、バイト
先の店主の大竹のケースを検討していくと、超絶レベルでもって相手の意思を
類推する力がある、とそう考えた方が理屈にあってる。人間だれしも多少はも
っている能力ではあるのだが、主人公のそれは桁外れに大きいわけ。言語が未
発達だった人類に備わっていた能力と考えれば、主人公の力は先祖返りともい
える。相手が発している声なきメッセージを正確に受けとる力。だからエスパ
ーとまではいえないのではないかな。
ただ、上記の「仮説」で説明できないのは、バイト仲間であった常磐さんから
響いてきた「声」との交感。コレは次元の違う話であって、空想をたくましく
すれば、我々の世界から分岐したありえたかもしれない世界とのコンタクトで
きる力・・・とかそんな妄想が浮かんでくる。主人公が常盤さんとまったく意
思疎通できなかったのも当たり前で、彼女はそもそも「救い」を求めようとは
してなかった。その点が、三雲さんたちとは事情がちがっていたわけだ。一応
の結論としていうなら、常磐さんとのケースに限り、主人公はエスパーだった
のかもしれないとはおもう。ただそんなことより、困った人を助けるべく相手
に踏み込んでいける主人公の侠気の方がぼくには好ましく思える。でなかった
ら、単なるお節介でしかないからネ。
でもって、ぼくが気に入ったのは、主人公のバイト先の店主である大竹さん。
こんな人が実際に周囲にいたらたまったものではないが、眺めている分には楽
しくなるキャラ(笑)案外と人を見ているとこもあり、この人をメインにした
お話があったら、ぜひとも番外編あたりで読んでみたい。
主人公がエスパーなのか、どうか?中学時代の三雲、高校時代の吉沢、バイト先の店主の...
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(1人)
16. シャーロック・ホームズの醜聞(スキャンダル)
晶文社 1999.7
小林司 著, 東山あかね 著
子門 さんの評価:
単純にホームズ物語を楽しみたい人であれば、目を通さないことを推奨する。
ホームズがモリアティ教授と相撃ちの形でもって死亡とのショッキングなシーン
でもって一旦物語が幕を閉じる。が、「生還」でもってホームズが実は死んでは
いなかった事情が明らかにされ、物語が再開となる。
で、なんで作者のドイルは、ホームズを殺そうとしたのか、世に流布していた説
としては「ホームズ物語ではなく、ドイルの本意は歴史小説を書きたかった」か
ら・・・と、そんな説明がなされてはいる。
が、これは真実とはほど遠いモノであって、本書を読んでいくと、仰天すべき事
実が明らかとなっていくのである。
ま、確かにそう言われれば、「突然として」宿敵たるモリアティが「出現」した
印象があったりと不自然なストーリー展開はあった。が、当時の、そして現代の
読者たちも「面白ければいい」とばかりあんまし気にとめなかったのだと思う。
ネタバレは避けるべきと思うから、これ以上のコメントは控えたいところではあ
るのだが、本書で語られた「真実」はじつに苦いものがある。
作家という人種が、かくもあるような存在だとしたら、マトモな精神の持ち主に
つとまる職業ではないことはいうまでもない。
単純にホームズ物語を楽しみたい人であれば、目を通さないことを推奨する。ホームズが...
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図書
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(1人)
17. 残照
田中 芳樹‖著
祥伝社 2023.1
子門 さんの評価:
ここ数年、田中芳樹さんの著作の刊行ぶりを拝見していると、たまっていた宿
題を片付けている、とそんな印象をうける。
本書もその一冊に入るかもしれない。
「中国武将列伝」(上・下中央公論社 1996年)その冒頭、「私選中国歴
代名将百人」の一人に選出されたのが、本書の主人公、郭侃。
1252年、モンゴル帝国、フラグ汗の西方大遠征に従軍し、常勝将軍ぶりを
発揮。「神人」と称されたという。
「正史」ではそんなに詳しく書かれてはいない。異伝もあったりする。
地中海の涯に沈む夕日をみたさ、という酔狂な動機付けは、むろん田中芳樹
さん一流の脚色だろう。投石機や火箭、そして回回砲などの兵器をあつかう漢
人部隊の指揮官としての郭侃は近いものがあっただろうけども、気候とか地形
をもみわけるナチュラリストとしての才能は、さてどうだろう?
しかしだからといって、失望したり、落胆するのは違うと思う。
作家・鈴木輝一郎の言に次のようなものがある。
歴史小説は歴史「小説」であって、「歴史」小説ではない。
(中略)正確な歴史を再現することではなく、気楽にたのし
んでいただくものだ。けっこう間違えられる
(「光秀の選択」毎日新聞出版 附記 より)
田中芳樹氏本人も、ベツのところで、いかに魅力的なウソをつくのか、それ
が作家としての腕の見せどころ・・・そんな意味のことを書いておられる。
読者としては、ソレをわきまえて楽しめば良いとおもうのだ。
付記1
本書で語られているような漢人による回回砲の部隊が存在したのは歴史的事実
である。豊田有恒さんの「モンゴルの残光」でも登場している。
付記2
本作品中、ぼくが気になったのは、モンゴル軍の残虐行為について、非難して
いるような箇所が二カ所ほどあったこと。現代人の感覚からするなら当然の批
判なのだろう。だけども、現代人の規範である近代ヒューマニズムでもって過
去の歴史を断罪するのは果たして妥当な行為なのだろうか?
僭越とは思うが、指摘しておきたい。
ここ数年、田中芳樹さんの著作の刊行ぶりを拝見していると、たまっていた宿題を片付け...
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図書
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(9人)
18. 名探偵の生まれる夜
大正謎百景 青柳 碧人‖著
KADOKAWA 2022.12
子門 さんの評価:
本書に登場する主立った人々は、以下のとおり。江戸川乱歩、相馬愛蔵、黒
光、野口英世、星一、鈴木三重吉、芥川龍之介、吉岡信敬、松井須磨子、与謝
野晶子、鉄幹、松下幸之助、富田銀蔵、南方熊楠、宮沢賢治、柳田国男、平塚
らいてう、山下清。
後世、歴史上にその名をのこすことになった人々の、日常系のささやかな謎解
きの物語集・・・本書を紹介するとそんな風になるかとおもう。
本書を彩る彼ら、彼女らの大半はそれなりの自負はあるにせよ、まさか自分の
名前が後世へと伝わろうとは夢想だにしていない。およそ権力とは無縁の人
々。それでも懸命に生きようとするその姿、なんともいとおしい。
第一話に登場する平井太郎、後に「江戸川乱歩」として知られる存在である
が、ホントにこんなそそっかしく素っ頓狂な人物だったのか?フィクションと
して盛った(!)部分もあるのだろうけど、いかにもありそうなストーリーで
笑いを誘われてしまう。第二話で披露された野口英世の破天荒な人柄も、先年
紙幣になったほどの人物とおよそかけ離れた人物像で、これまた驚くばかり。
本書に登場する野口の親友で、後援者の一人となった星一をはじめとする同時
代の人々の証言があり、おそらくは真実に近いのであろう。
・・・という風にいちいちコメントをしていたら、いつまでたっても終わらな
いので、最後にひとつだけ。
ぼく個人の願望が実現できるのであるなら、星一氏本人、もしくは星新一氏、
そして吉岡信敬の名を知らしめた作家・横田順彌氏。この方々には、本書を読
んでもらいたかった。
いやむろん、ソレは本書で「探偵役」をつとめた人々、すべてに共通すること
であろうけども、さぞかし楽しんでもらえたのではないかと僕はおもうのだが
如何であろうか?
本書に登場する主立った人々は、以下のとおり。江戸川乱歩、相馬愛蔵、黒光、野口英世...
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図書
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(5人)
19. 秋雨物語
貴志 祐介‖著
KADOKAWA 2022.11
子門 さんの評価:
「秋雨」をテーマにした四篇のホラー集。
格好つけていうなら、秋雨でもって異界への扉が開く物語集といえるかも。
冒頭の「餓鬼の田」は短編だが、他の「フーグ」「白鳥の歌」「こっくりさ
ん」は中編といってもいいボリュームがある。
すべて救いのないお話ばかりで、バイオリズムが低下気味の方にはお薦めはし
ない。
とくに、「白鳥の歌」!世間から忘れ去られた天才的な二人の歌姫の物語。色
々と音楽の蘊蓄が語られているので、それなりに勉強にはなるのだけども、結
末がイケナイ。おぞましいというか、著者の過去の作品で云うと「天使の囀
り」を想起させる怖さがある。
ただ、物語を離れたところでいうなら、「だから、どうした?」という感じ。
人類の進化自体、ある種のウィルスが介在していたとの学説があるくらいで、
人間ばなれした歌声のウラにどんな事情があるによ、感動した事実はまちがい
ないところだろう。それまでも否定してしまうのはどうかと思う。かのご隠居
氏には、そんな風に申しあげたいところではある。
それと、冒頭のお話で、ラストシーン。あの、女性が「心変わり」する場面。
コレがどうにも理解できないのだ。なぜに、ああまで豹変してしまったのか、
どなたか、説明できる方がおられるならば、ぜひご教示いただきたい。
「秋雨」をテーマにした四篇のホラー集。格好つけていうなら、秋雨でもって異界への扉...
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図書
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(1人)
20. わたしは大統領の奴隷だった
ワシントン家から逃げ出した奴隷の物語 エリカ アームストロング ダンバー‖著 キャサリン ヴァン クリーヴ‖著 渋谷 弘子‖訳
汐文社 2020.12
子門 さんの評価:
アメリカ初代大統領、ジョージ・ワシントンが偉大な政治家であることはいう
までもない。そのあたりのことは、例えば「アメリカ大統領物語」(猿谷要編
新書館)の最初のページ、「ワシントン、ジョージ」の項目を読めば理解でき
るとおもう。劣勢の植民地軍を率いて戦い抜いたカリスマ性、独裁を否定して
民主国家の樹立を志した先見性など、論者によっては「時代に冠絶した」との
形容をつける研究者もいてもおかしくはない。
しかしながら、そんなワシントンも本書の主人公、オーナ・マリア・ジャッジ
の立場からみると、ずいぶんと印象がかわってくる。等身大のワシントンがみ
えてくるというか、本書は非・神話化の作業の成果というべきかもしれない。
本書はオーナという黒人女性の伝記という体裁をとっているが、おそらくは
彼女自身が書き残したモノなど殆どないのではないかとおもう。
本書にも引用されているが、オーナの晩年、彼女の来歴を紹介した新聞記事
「グラニット・フリーマン」(1845年5/22付け)により、彼女の生涯
がクローズ・アップされたのではないか。在りし日の猿谷要氏は、その著作の
中にオーナへの言及がないところをみると、彼女の存在を知らなかったのでは
ないかとおもう。
オーナ自身が書き残したモノなど殆どないと思われるが、おそらくは彼女に
インタビューした記者、あるいは聖職者らにより記録されたらしいオーナのコ
トバが紹介されている。オーナの「主人」であったワシントン夫人、マーサに
ついて語った「夫人は祈祷書を読んでいましたが、それはお祈りとはよべませ
ん」というもので、云った本人に自覚があったかどうか定かではないけど、夫
人への痛烈なまでの批判となっている。
本書の末尾に、オーナ関連の年表が掲載されている。「無い物ねだり」との自
覚はあるけども、この年表に入れてほしかったファクターのひとつに、例えば
エイブラハム・リンカーンの存在がある。オーナ生存中は、リンカーンは下院
議員だったハズで、その両者をどう時代のなかで位置づけるのか?
そんな視点からの考察もまた興味ふかいモノがあったのではないか。
年少者とかに限らず、大人にも読んでもらいたい作品である。
アメリカ初代大統領、ジョージ・ワシントンが偉大な政治家であることはいうまでもない...
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小林司 著, 東山あかね 著
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KADOKAWA 2022.12
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汐文社 2020.12