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レビュー一覧 (46件)
しゅうちゃんさんの投稿レビュー/甲斐市立図書館
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(6人)
11. 邯鄲の島遙かなり 上
貫井 徳郎‖著
新潮社 2021.8
しゅうちゃん さんの評価:
明治維新から、令和の始まりまで約150年。離島に生きた人々の姿を描く。「一ノ屋」の血を引く一族が、それぞれの時代を生き、つないでゆく。人物を中心に描きつつ、それぞれの時代状況も描く17の物語。
貫井徳郎は、「慟哭」という緊張感高いミステリー小説で名を馳せた推理小説作家も、今回の小説は、全3巻、質・量とも「大河小説」。17の物語の主人公は、血筋を受けて才能・秀でたところのある人だけでなく、血筋でありながら、秀でることができず平凡であることに、足掻く人も描いている。それが、物語に広がりと奥行きをもたらすことになっている。
ミステリー性もあり、ユーモラス性もある物語。こういう広がりのある世界を想像力で創造できる貫井徳郎は、一段大きな作家となった。
明治維新から、令和の始まりまで約150年。離島に生きた人々の姿を描く。「一ノ屋...
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(11人)
12. 月夜の森の梟
小池 真理子‖著
朝日新聞出版 2021.11
しゅうちゃん さんの評価:
人生最大のストレスは「配偶者の死」。長年連れ添ったパートナーの退場で、当たり前だった日常が、突然足元から崩れてくる。喪失の空間に独り取り残され、ともにしてきた日々の記憶が、哀しみを抱いて迫ってくる…。
子供をもたないと決め、夫婦とも作家という濃密な時間を共有してきた二人が、その別れを迎えた時、遺された一人は何を想うのか…。
団塊の世代がいよいよ後期高齢者を迎えた。人生の最大ストレスの時期、おひとり様の老後を迎える。団塊の世代の作家が、その到来の晩鐘を鳴らす。
人間とは違う時間軸で動いている森の自然、森の生き物を描きつつ、心の動きを、静かに綴る。月夜の森から梟の鳴き声が聞こえてくる…。
人生最大のストレスは「配偶者の死」。長年連れ添ったパートナーの退場で、当たり前...
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(39人)
13. 黒牢城
Arioka Citadel case 米澤 穂信‖著
KADOKAWA 2021.6
しゅうちゃん さんの評価:
織田信長に臣従し、信頼をえながらも、謀反を起こした荒木村重。同じような謀反人・松永久秀とともに、風流を理解する人物でもあり、「利休十哲」の一人とされている。その村重は、自らの居城・有岡城で1年にわたって籠城を続けた。他が潔く自決、もしくは切腹の最後となるのと異なり、荒木は、籠城をともにしてきた家臣や側室を見捨てて逃亡というあるまじき対応を選択。その後、本能寺の変後は秀吉につかえ、商人の妻を娶り、茶の湯三昧の生活を送った。しかし、秀吉から疎まれると、再び、妻と家を棄て、仏僧となって寺院に入った。その生き方たるや極めて稀有。
その荒木村重は、籠城の際、織田側の使者としてやってきた黒田官兵衛を地下牢に1年間幽閉した。通常は、使者を切って態度を明らかにするはずも、なぜか生かし続けた。また黒田官兵衛も、キリシタンゆえか生き続け、その後、秀吉を助け、秀吉におそれながら、筑前福岡藩の祖となった。
この戦国時代でも特異な生き方をした二人、その二人には籠城中、どういうやりとりがあったのか。二人の姿を、籠城中の怪事件の発生とその謎解き解決の物語として描く。
織田信長に臣従し、信頼をえながらも、謀反を起こした荒木村重。同じような謀反人・...
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(4人)
14. 逃げる女
青木 俊‖著
小学館 2021.10
しゅうちゃん さんの評価:
「逃走は最大の自白」。逃げるということは有罪であることを自白していることと同じ。だから警察は組織のメンツをかけて逃げる被疑者を追う。北海道を主舞台に白熱の追走劇が展開する。しかし、その追走劇の先には、追い込んでも捕まえることができない闇の世界があった…。中年のベテラン刑事と若い女性刑事の凹凸コンビが魅力的に描かれているのと、逃走劇の組み立てが秀逸。スリリング性に富んだ社会派推理小説。楽しめる。
「逃走は最大の自白」。逃げるということは有罪であることを自白していることと同じ。...
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(12人)
15. 雪に撃つ
道警・大通警察署 [道警シリーズ] [9] 佐々木 譲‖著
角川春樹事務所 2020.12
しゅうちゃん さんの評価:
雪まつりを舞台に、いつもの北海道警察本部大通署のメンバーが事件を追う。今回の主テーマは、技能実習制度。家庭内暴力からの家出娘捜索、車両盗難事故、発砲事件等、複数の事件の捜査が一つに収斂されていく。そして…。いつものメンバーが、いつものようにそれぞれの個性を発揮しつつ事件解決に向かう。
技能実習生の問題にせよ、入国管理制度の問題にせよ、今の制度運用には、外国人労働者に対する敬意が感じとれない。安い労働力の確保が目的となり、「雇用の場を提供してあげている」という姿勢が隠せない。制度本来の趣旨から言っても、人の力を借りる、創造力を引き出す機会を提供することに、もっと力が注がれるべき。今の制度運用では、効率優先となり、結果国民の賃金まで年々下がっていく。付加価値を高める、そのことに役割発揮できる人材を国内外から集め育てていく。そういう社会にならなければ、明るい未来は築けない。
次回のテーマは介護か。介護によりメンバーの関係にも変化が?
雪まつりを舞台に、いつもの北海道警察本部大通署のメンバーが事件を追う。今回の主...
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(5人)
16. 自由への手紙オードリー・タン
オードリー タン‖語り クーリエ ジャポン編集チーム‖編
講談社 2020.11
しゅうちゃん さんの評価:
コロナ禍でのマスク在庫管理アプリで、名を馳せた台湾の若きIT担当相、オードリー・タン。彼は、デジタルの天才であるだけでなく、何ものにもとらわれない「自由な人」であった。彼がとらえる自由とは、「自分だけでなく他の人も解放し、自由にしてあげること。自分の可能性を力に変え、その力を確かめるために役立てること。自由とは受け取るものではなく、惜しみなく与えるもの。自由を共有すること。それこそ、私たちがつくる自由への道」。彼が、いつの日か、香港・中国を自由への道に導いてくれることを、願わずにはいられない。
コロナ禍でのマスク在庫管理アプリで、名を馳せた台湾の若きIT担当相、オードリー...
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(1人)
17. 恋するアダム
CREST BOOKS イアン マキューアン‖著 村松 潔‖訳
新潮社 2021.1
しゅうちゃん さんの評価:
もし、あなたが、アンドロイドを購入し、初期設定の入力をするとしたら、協調性、外向性、知性、勤勉性、情緒安定性等、性格を形成するパラメーターは、どうバランスをとって設定しますか。そもそも希望するのは男ですか女ですか。その自ら性格設定したアンドロイドが、知識と経験を蓄積し、ディープラーニングし、自分の恋人に恋をし、セックスまでするようになったら、あなたは何を想いますか。
アンドロイド・人口知能が、今後どう進化していくのかは、まだSFの世界も、そのアンドロイドが、もし自らの意志をもつようになったら、「自分の電源をかってに切られないようにする。ほとんどが自殺をする」という想定は哀しい。心がやどるとしたら、それはもはやアンドロイドではないのだから…。
近未来の物語でありながら、天才数学者やフォークランド紛争を取り上げ、過去のありえたかもしれないもう一つの過去も描く。イアン・マキューアンの挑戦作。
もし、あなたが、アンドロイドを購入し、初期設定の入力をするとしたら、協調性、外...
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(3人)
18. エデュケーション
大学は私の人生を変えた タラ ウェストーバー‖著 村井 理子‖訳
早川書房 2020.11
しゅうちゃん さんの評価:
人は、与えられた環境下で、その環境から自らの力で抜け出し、自由をえることは容易ではない。「モルモン教徒で、白人至上主義者で、双極性障害」の父は、科学や医療を否定し、陰謀史観に基づく偏った思想をもっていた。母も含め父の精神的支配下にある7人の兄弟姉妹の末っ子であった著者は、アイダホの山の中で、学校にも通わされることなく、病院の治療を受けられることもなく、廃材処理・加工の危険な作業を手伝って育ってきた。父と兄の、暴力・虐待は、常軌を逸していた。暴力と虐待の環境のもとで、壊れた心をかかえたまま、そこからの脱出を可能にするもう一人の私を生み・育ててきたのは「教育」だった。
息苦しいほどの暴力と虐待、そこから生まれる事故、その事故後の考えられない対応等、執拗な暴力と精神的虐待を描きながら、壮絶な呪縛の世界から抜け出そうとしていく姿を描く。
挿話が印象的。高さ約10mのケンブリッジ大学の礼拝堂の屋根に立った時、みんなは壁にしがみついて体を丸めていたのに、まっすぐ立って、ポケットに両手を突っ込んでいた著者・タラに、教授がどうしてそうしていられたのか尋ねられて、
「私がこの風の中で立っていられるのは、風の中にたとうとしないからです。風はただの風なんです。地上ではこの風に耐えることができているんだから、上のこの場所でも耐えられるはずなんです。違いなんてありません。違いは自分の頭のなかで作り出してしまうものなんです」。著者は、暴力と虐待の恐怖の体験の風を、教育の力で苦闘し、その風をただの風にかえようとしてきた。時折風に吹き倒されようとすることもあったし、風の記憶はいまだに消えないにせよ…。
人は、与えられた環境下で、その環境から自らの力で抜け出し、自由をえることは容易...
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(10人)
19. イグジット
相場 英雄‖著
日経BP 日経BPマーケティング(発売) 2021.1
しゅうちゃん さんの評価:
「財政危機による破綻」、その危機は、コロナ禍でそのことが現実となる可能性をさらに高め、その日の到来を早めている。その発生確率は、首都直下地震や東南海地震の「これから30年で発生する確率70%」より高い。自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過少評価してしまう「正常性バイアス」、それは「財政危機による破綻」により顕著に出ている。コロナ禍だから、余計にそのことに触れないという雰囲気があるが、問題を先送りすればするほど、その危機はより大きくなる。できれば、そういうことになる前に、この世から去ることができたらとも思うが、子どもたちや孫たちのことを考えると、そうもいっていられない。
本書でも描かれているが、リーマンショック後、施行された中小企業金融円滑化法、別名モラトリアム法は、2019年3月で終了している。その終了の影響が徐々に出始めた時期に、コロナ禍で、再び同種の対応がされ、問題が先送りされたような状況。業績回復せず、破綻に陥る飲食・旅行・宿泊関連の中小企業が、今後1~2年であらたに発生し、増加するのは確実。そうなると、中小企業に貸し付けを行った地銀等の金融機関の業績悪化が進み、金融危機が訪れる。菅政権で、地銀再編が政策的に打ち出されているが、リーマンショック以来の歪が、より大きな問題となって襲ってくるなかでの再編は、後手後手の対応とならざるをえない。
財政危機を、「文春砲」ともからめ、よりリアルにおもしろおかしく、分かりやすく描いている。特に、登場する副首相・財務大臣は、A副首相・財務大臣を彷彿とさせ、助演男優賞受賞ものの書きぶり。
「財政危機による破綻」、その危機は、コロナ禍でそのことが現実となる可能性をさら...
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(2人)
20. 愛さずにはいられない
藤田 宜永‖著
集英社 2003.5
しゅうちゃん さんの評価:
人生は二度体験することはできない。それが青春のひとときであれば、なおさら濃密なより輝きをもった時間として甦る。多くの青年が経験する、性的欲求が自分で抑えることができにくい時間。それは粗削りで剥き出しな時間だが純な時間でもある。思い出が、喜怒哀楽に満ち、彩多いものであればあるほど、しだいに哀しさが心の中に広がる。それは、時間とともに寂しさを伴った記憶となり、愛おしさに変わっていく。一度きりしかない人生の中で、そういう恋をできた人には、自分の時間が後ろ回しに何度も回ってくるはず。
作家藤田宜永のヰタ・セクスアリスが映像のように流れていく。レイ・チャールズの「愛さずにはいられない」の歌が聞こえてきそうだ。もう一つのありえたかもしれない人生について、想いをはせる時、あなたは何を思いますか。
人生は二度体験することはできない。それが青春のひとときであれば、なおさら濃密な...
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