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レビュー一覧 (13件)
unofficial ファン倶楽部さんの投稿レビュー/和泉市立図書館
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図書
(1人)
1. 潮音 第1巻
宮本 輝‖著
文藝春秋 2025.1
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
構想20年、執筆約10年、「文學界」連載92回
連載開始から追うようにして「潮音」を読んでいました。
開始後大河ドラマ「西郷(せご)どん」が放映され、小説連載とあわせ色々と刺激されて、幕末維新ものをじっくり再読することができました。司馬遼太郎、浅田次郎、北方謙三等のあの作品この作品はもちろん、連載終了までに出版された関連する作品を読み、「潮音」の作品世界を様々な角度から堪能できたと思います。全体を通して島崎藤村の「夜明け前」はとても重要ですよ。
最近の関連する作品は例をあげると、玉岡かおるの「帆神」で北前船を操る荒々しい男たちの姿を知り、辻原登の「陥穽 陸奥宗光の青春」では陸奥の有能ぶりと政府転覆計画とのギャップに驚かされ、天童荒太の「青嵐の旅人」に描かれた時代考証を抜きにした(本筋はしっかり固めている)作者の想像力全開の面白さに夢中になりました。今野敏の「天を測る」の「坂本龍馬は売国奴」との認識には度肝を抜かされたなあ。2年前に出た植松美土里の「富山売薬薩摩組」は「潮音」とぴったり重なる作品でその違いを味わうのもいいかもしれません。
第一巻は主人公・川上弥一が富山の薬売りに身を投じたいきさつを背景に、黒船来航から安政の大獄前夜までを描く。連載時になかった章立てがなされていて、とても読みやすくなったかな。作者の語りの妙に引き込まれながら、薬売りという庶民が当時の事件をどう捉え先を読んでいったかが臨場感を持って描かれます。歴史上の英雄や志士が一切登場しません。それにしても、あそこまで薩摩藩に肩入れしたのか。。。作者が言うように「驚くべき集団」ですね。
構想20年、執筆約10年、「文學界」連載92回連載開始から追うようにして「潮音」...
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貸出不可(未所蔵)
(1人)
2. 文化の脱走兵
講談社 2024.7
奈倉有里
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
去年紫式部文学賞を受賞したばかりなのに・・・。
有里さんを知ったのは『同志少女よ、敵を撃て』の作者との対談『文学キョーダイ』を読んだとき。
『同志少女~』を図書館で予約しようとしたけど200人近くの予約数。どうしよか考えて他の本がないか探して行き当たった。詳しくは書かないが、この作者は言っていることがステレオタイプで、あまり近づきたくないタイプ。で予約は取りやめ。
その姉の有里さんのお話に、この人は何かが違うと強い印象を受けて、『夕暮れに夜明けの歌を』で圧倒された。「目覚めたひと」だとがぜん注目して以来本の刊行を楽しみにしている。
『文化の脱走兵』ってすごく刺激的なタイトル。逆転の発想なのだが”百年前のロシアの詩人”の警句を真っ正面から受け止め、今できることしなければいけないことをユーモアを交えながら真剣に考え、書くことによって力強く実行している姿が、とても頼もしい。
本の内容は全面的に賛同するけど、ちょっと意地悪を言ってみたくなる。有里さんは新幹線をよく利用し、ネットを自由に操っているけど、それらの文明の利器を稼働させるのにどれだけの電力が必要
なのか、分かっていらっしゃるのかな、と。環境を破壊するだけの再生エネだけで賄えるのか。まあ、まっとうな為政者の問題意識としておきますが。あっ、僕は普通の庶民ですので誤解のなきよう。(^^
去年紫式部文学賞を受賞したばかりなのに・・・。有里さんを知ったのは『同志少女よ、...
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図書
(0人)
3. もの想う時、ものを書く
Amy's essay collection since 2000 山田 詠美‖著
中央公論新社 2024.11
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
河野多恵子との対談『文学問答』で詠美さんは
作家の一番大切な資質は「記憶力」だと強調して
いたのを思い起こした。
詠美さんも指摘するように記憶は自分の都合のいいように
作りかえるものだとは思うが、この事実を前提にしても
詠美さんの記憶力には驚かされる。
作家生活40周年・・・。もうそんなになりますか。
<大事なのは「ほろ」だと思った。以後、私は、その
「はろ」を追及して今に至る>
冒頭から、こんな、おっと思うフレーズに出会えて、
得した気分になれる・・・詠美さん、絶好調
芥川選評を筆頭に「詠美節」に酔いしれてください。
河野多恵子との対談『文学問答』で詠美さんは作家の一番大切な資質は「記憶力」だと強...
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図書
(13人)
4. 死んだ山田と教室
金子 玲介‖著
講談社 2024.5
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
青春、友情、そして死・・・・
設定が特殊だけど、前半の男子高校生たちのおバカな
やりとりに、何気ない伏線が隠されていて、終盤、
ああ、そうだったんだ!と驚かされた。
安部公房が登場した時を振り返ってみたくなる
作品だと思う。
評論家の皆さん、この作品に対するステージを
上げてみては?
おすすめです!!
青春、友情、そして死・・・・設定が特殊だけど、前半の男子高校生たちのおバカなやり...
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図書
貸出可能
(43人)
5. 八月の御所グラウンド
万城目 学‖著
文藝春秋 2023.8
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
特に敬遠しているわけではないが、京都はどうも馴染めない。
若いころから仕事などでちょくちょく足を運んでいるのだが、
神社仏閣に興味がないのに加え、長い歴史に染み込んだ人の
生死を含んだ数多の出来事がそこいらじゅうにこびりついて
いて、その空気に触れるのがダメなのである。
とはいううものの「歴史」は好きなので、古代から現代に
わたる歴史ものは手あたり次第読んできたつもりである。
特に敬遠しているわけではないが、京都はどうも馴染めない。若いころから仕事などでち...
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図書
(42人)
6. 水車小屋のネネ
津村 記久子‖著
毎日新聞出版 2023.3
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
家から閉め出され、近くの公園でひとり本を読む葎・・・
そっと抱きしめて、頭をやさしく撫でてやりたい(もちろん嫌がられるだろうけど 汗)
この8歳の時の経験がその後の律の人生に抜きがたいトラウマになったとはいえ、律は決して泣かない!姉の理沙と移り住んだ川の音が聞こえる街で、姉に心配をかけず、周りの善意に甘えることもなく健気に振る舞う律のなんといじらしいこと。。。
「強くなれ 誰も信じるな わかったな」
ヨウムのネネが発する映画「グロリア」のこのセリフは、律をずっと支え続けてきたに違いない。
やがて、成長するにつれ、周りの人々の“良心”に育てられてきたのだと自覚するに至るのだが。
家から閉め出され、近くの公園でひとり本を読む葎・・・そっと抱きしめて、頭をやさし...
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貸出可能
(52人)
7. 君のクイズ
小川 哲‖著
朝日新聞出版 2022.10
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
クイズプレーヤーの主人公があるクイズ番組の決勝で遭遇した‘’疑惑‘’を探るストーリー。
クイズプレーヤーたちの技や頂点を極めようと努力する姿
が、日ごろ思っていた以上に緻密に描かれていて興味深か
った。
特に、クイズ番組をナマで放送する際の舞台裏が徐々に
明かされていく過程は、‘’謎‘’の背景に深くかかわってい
て、ストンと腑に落ちた。同時に、こうした制作者側の
隠された意図?にうまく乗せられて現在に至るクイズブ
ームがあるのだと知る。
クイズプレーヤーの主人公があるクイズ番組の決勝で遭遇した‘’疑惑‘’を探るストー...
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図書
貸出可能
(1人)
8. 苦手から始める作文教室
文章が書けたらいいことはある? ちくまQブックス 津村 記久子‖著
筑摩書房 2022.9
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
「作文を仕事にしている」
いくら若い読者が対象とはいえ、自身の仕事についてこう語る津村さんって、
どうよ?と思われる方がいるかもしれませんね。この目線の低さ、本音を
さりげなく、ズバッと語るところが津村流なのです( ̄◇ ̄;)
「作文は何を書いたらいいのだろう?」
「作文を書いたらいいことがある?」
「作文はどう書いたらいいだろう?」
「メモを取ろう」
「書き始めてみよう」
「伝わる文章ってどんなもの?」
「感想文をなぜ書くか?」
「文章をもっとよくしたいなあと思った時に」
「作文に正解はあるか」
といった作文(文章)を書く上での問いかけを、自身の体験をベースに誠実に
語っています。若者向けだと侮るなかれ!誰かの言葉を借りるのではなく、
また高尚な理論に頼るのでもなく、あくまで自身の言葉で、幼少のころから
体験してきたことを平明に語るスタイルは津村節とも呼んでもいいかも。
うん、「文章が書けたらいいことはある!」と
前向きになるから不思議ですね。
あげられた作例(朝日夕刊に連載の「となりの乗客」)2つを再読でき、
改めて津村さんのいいところを実感。偉そぶらず、ましてや飾ることもなく、
自然に文章を紡いでいく。特に、「本は友達」との主張は、津村作品のいく
つかに反映されていて、納得ですね。来年刊行される『水車小屋のネネ』
にも色濃く出ていると思います。
苦言ですが、編集者さんに一言。
いろいろ事情があるとは思いますが、校正の手が入っていないようですね。
P29の最後の行の意味がつかめない(汗)
P69ですが、“しょぼい”と“しょんぼり”はどっちかしら?2つとも正解?
『文にあたる』を読んだばかりなので気になってます。
「作文を仕事にしている」いくら若い読者が対象とはいえ、自身の仕事についてこう語る...
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貸出可能
(2人)
9. やりなおし世界文学
津村 記久子‖著
新潮社 2022.5
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
こんな書評あるいは読書案内ってあっただろうか?
すぐに浮かぶのは『文芸漫談』(いとうせいこう×奥泉光)と斉藤美奈子
さんの書評か。本音で語るスタイルがとにかく面白い。
対して正統な文学論、作品論をベースに読書案内するタイプは丸谷才一と
湯川豊さんの一連の対談本と、各新聞の書評欄があり、まじめな内容ある
いはお堅いイメージがある。
前者も後者も読書の参考に重宝しているが、傾向があるとしたら評者の本
音が前面に出た書評が増えてきている気がする。
最近読んだ『『罪と罰』を読まない』(三浦しをんさん、岸本佐知子さん
等による対談本)は明らかに前者の最たるものだろう。
津村さんが読んだ92作品の内、私が読んだことのある小説を数えてみた。
36作品だった。うん、結構読んでいるかもと思いつつも、あらすじを
思い出せないのがいくつかあった(-_-;) 残りの56作品は手が出せなか
ったかそもそも知らなかったものばかり。
津村さんの世界文学の「感想」は、独特な突込みに溢れている。「知らん
がな」と突き放したり、頭がからっぽな人の「性根が腐っていく」とか、
「アホな」とか、「しょうもない」とかの表現が多用されていて、一瞬、
こんなことを書いていいのと戸惑うのだが、そこから作品の素晴らしさに
入っていく手練手管に感心することしきりであった。
『華麗なるギャツビー』はそんな感じ方をするんだ、やれやれ、と言って
しまうかもしれないハルキさんの姿が目に浮かぶなあ・・・
『カラマーゾフの兄弟』のそんなところに突っ込みを入れるなんて、こ
りゃまいったなあ、と苦笑いをする亀山郁夫先生・・・。
わはは、おそるべし、津村記久子( ̄◇ ̄; (私の想像です)
前から気になっていた『灯台へ』。なかなか手が出せなかったけど、津
村さんに背を押されて読むことにしました。ハードルを下げてくれた感
じで、有難かった。ありがとう!
こんな書評あるいは読書案内ってあっただろうか?すぐに浮かぶのは『文芸漫談』(いと...
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貸出可能
(3人)
10. くよくよマネジメント
津村 記久子‖著
清流出版 2016.5
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
まず、自己啓発本のように受け取る読者もいるかもしれないが、そうした本
につきものの過去の偉人や思想家、哲学者、宗教家の言葉がほとんど引用さ
れていないことだ。それらしい言葉は、「住めば都」だとか「人は人、自
分は自分」といった慣用句のみで、最近出た『やりなおし世界文学』にある
ヒルティの『幸福論』さえ言及されていないのである。津村さんが現実に直面
した「くよくよ」を津村さんなりに考えて書いたエッセイだということだ。す
なわち独自性がある。その分、他のエッセイで特徴的な読みやすさはないか
もしれない。
このエッセイは、10年ほど前に連載されたものだが、この時期、津村さんは
人間関係など?でしんどい渦中にあったらしい。説得力があるのはそのせいだ
といえるかもしれない。
次に気づくのは、この「くよくよ」な状況で得た経験が、その後の作品に生
かされているということ。直近の『現代生活独習ノート』や『サキの忘れ物』
などだ。“津村記久子ワールド”全開!といっていい。
ただ、“死に方”についての見方は、津村さんのお年では仕方ないかもしれ
ない。いや、私が年を重ねて自然に受け入れている死生観かもしれないが、
これから津村さんの考えが深まるのをゆっくり見てみたい気もするのである。
もちろん、正解があるとは思っていなけれども・・・
まず、自己啓発本のように受け取る読者もいるかもしれないが、そうした本につきものの...
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