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レビュー一覧 (9件)
unofficial ファン倶楽部さんの投稿レビュー/和泉市立図書館
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(34人)
1. 八月の御所グラウンド
万城目 学‖著
文藝春秋 2023.8
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
特に敬遠しているわけではないが、京都はどうも馴染めない。
若いころから仕事などでちょくちょく足を運んでいるのだが、
神社仏閣に興味がないのに加え、長い歴史に染み込んだ人の
生死を含んだ数多の出来事がそこいらじゅうにこびりついて
いて、その空気に触れるのがダメなのである。
とはいううものの「歴史」は好きなので、古代から現代に
わたる歴史ものは手あたり次第読んできたつもりである。
特に敬遠しているわけではないが、京都はどうも馴染めない。若いころから仕事などでち...
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(34人)
2. 水車小屋のネネ
津村 記久子‖著
毎日新聞出版 2023.3
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
家から閉め出され、近くの公園でひとり本を読む葎・・・
そっと抱きしめて、頭をやさしく撫でてやりたい(もちろん嫌がられるだろうけど 汗)
この8歳の時の経験がその後の律の人生に抜きがたいトラウマになったとはいえ、律は決して泣かない!姉の理沙と移り住んだ川の音が聞こえる街で、姉に心配をかけず、周りの善意に甘えることもなく健気に振る舞う律のなんといじらしいこと。。。
「強くなれ 誰も信じるな わかったな」
ヨウムのネネが発する映画「グロリア」のこのセリフは、律をずっと支え続けてきたに違いない。
やがて、成長するにつれ、周りの人々の“良心”に育てられてきたのだと自覚するに至るのだが。
家から閉め出され、近くの公園でひとり本を読む葎・・・そっと抱きしめて、頭をやさし...
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(46人)
3. 君のクイズ
小川 哲‖著
朝日新聞出版 2022.10
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
クイズプレーヤーの主人公があるクイズ番組の決勝で遭遇した‘’疑惑‘’を探るストーリー。
クイズプレーヤーたちの技や頂点を極めようと努力する姿
が、日ごろ思っていた以上に緻密に描かれていて興味深か
った。
特に、クイズ番組をナマで放送する際の舞台裏が徐々に
明かされていく過程は、‘’謎‘’の背景に深くかかわってい
て、ストンと腑に落ちた。同時に、こうした制作者側の
隠された意図?にうまく乗せられて現在に至るクイズブ
ームがあるのだと知る。
クイズプレーヤーの主人公があるクイズ番組の決勝で遭遇した‘’疑惑‘’を探るストー...
図書
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(1人)
4. 苦手から始める作文教室
文章が書けたらいいことはある? ちくまQブックス 津村 記久子‖著
筑摩書房 2022.9
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
「作文を仕事にしている」
いくら若い読者が対象とはいえ、自身の仕事についてこう語る津村さんって、
どうよ?と思われる方がいるかもしれませんね。この目線の低さ、本音を
さりげなく、ズバッと語るところが津村流なのです( ̄◇ ̄;)
「作文は何を書いたらいいのだろう?」
「作文を書いたらいいことがある?」
「作文はどう書いたらいいだろう?」
「メモを取ろう」
「書き始めてみよう」
「伝わる文章ってどんなもの?」
「感想文をなぜ書くか?」
「文章をもっとよくしたいなあと思った時に」
「作文に正解はあるか」
といった作文(文章)を書く上での問いかけを、自身の体験をベースに誠実に
語っています。若者向けだと侮るなかれ!誰かの言葉を借りるのではなく、
また高尚な理論に頼るのでもなく、あくまで自身の言葉で、幼少のころから
体験してきたことを平明に語るスタイルは津村節とも呼んでもいいかも。
うん、「文章が書けたらいいことはある!」と
前向きになるから不思議ですね。
あげられた作例(朝日夕刊に連載の「となりの乗客」)2つを再読でき、
改めて津村さんのいいところを実感。偉そぶらず、ましてや飾ることもなく、
自然に文章を紡いでいく。特に、「本は友達」との主張は、津村作品のいく
つかに反映されていて、納得ですね。来年刊行される『水車小屋のネネ』
にも色濃く出ていると思います。
苦言ですが、編集者さんに一言。
いろいろ事情があるとは思いますが、校正の手が入っていないようですね。
P29の最後の行の意味がつかめない(汗)
P69ですが、“しょぼい”と“しょんぼり”はどっちかしら?2つとも正解?
『文にあたる』を読んだばかりなので気になってます。
「作文を仕事にしている」いくら若い読者が対象とはいえ、自身の仕事についてこう語る...
図書
貸出可能
(2人)
5. やりなおし世界文学
津村 記久子‖著
新潮社 2022.5
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
こんな書評あるいは読書案内ってあっただろうか?
すぐに浮かぶのは『文芸漫談』(いとうせいこう×奥泉光)と斉藤美奈子
さんの書評か。本音で語るスタイルがとにかく面白い。
対して正統な文学論、作品論をベースに読書案内するタイプは丸谷才一と
湯川豊さんの一連の対談本と、各新聞の書評欄があり、まじめな内容ある
いはお堅いイメージがある。
前者も後者も読書の参考に重宝しているが、傾向があるとしたら評者の本
音が前面に出た書評が増えてきている気がする。
最近読んだ『『罪と罰』を読まない』(三浦しをんさん、岸本佐知子さん
等による対談本)は明らかに前者の最たるものだろう。
津村さんが読んだ92作品の内、私が読んだことのある小説を数えてみた。
36作品だった。うん、結構読んでいるかもと思いつつも、あらすじを
思い出せないのがいくつかあった(-_-;) 残りの56作品は手が出せなか
ったかそもそも知らなかったものばかり。
津村さんの世界文学の「感想」は、独特な突込みに溢れている。「知らん
がな」と突き放したり、頭がからっぽな人の「性根が腐っていく」とか、
「アホな」とか、「しょうもない」とかの表現が多用されていて、一瞬、
こんなことを書いていいのと戸惑うのだが、そこから作品の素晴らしさに
入っていく手練手管に感心することしきりであった。
『華麗なるギャツビー』はそんな感じ方をするんだ、やれやれ、と言って
しまうかもしれないハルキさんの姿が目に浮かぶなあ・・・
『カラマーゾフの兄弟』のそんなところに突っ込みを入れるなんて、こ
りゃまいったなあ、と苦笑いをする亀山郁夫先生・・・。
わはは、おそるべし、津村記久子( ̄◇ ̄; (私の想像です)
前から気になっていた『灯台へ』。なかなか手が出せなかったけど、津
村さんに背を押されて読むことにしました。ハードルを下げてくれた感
じで、有難かった。ありがとう!
こんな書評あるいは読書案内ってあっただろうか?すぐに浮かぶのは『文芸漫談』(いと...
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(3人)
6. くよくよマネジメント
津村 記久子‖著
清流出版 2016.5
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
まず、自己啓発本のように受け取る読者もいるかもしれないが、そうした本
につきものの過去の偉人や思想家、哲学者、宗教家の言葉がほとんど引用さ
れていないことだ。それらしい言葉は、「住めば都」だとか「人は人、自
分は自分」といった慣用句のみで、最近出た『やりなおし世界文学』にある
ヒルティの『幸福論』さえ言及されていないのである。津村さんが現実に直面
した「くよくよ」を津村さんなりに考えて書いたエッセイだということだ。す
なわち独自性がある。その分、他のエッセイで特徴的な読みやすさはないか
もしれない。
このエッセイは、10年ほど前に連載されたものだが、この時期、津村さんは
人間関係など?でしんどい渦中にあったらしい。説得力があるのはそのせいだ
といえるかもしれない。
次に気づくのは、この「くよくよ」な状況で得た経験が、その後の作品に生
かされているということ。直近の『現代生活独習ノート』や『サキの忘れ物』
などだ。“津村記久子ワールド”全開!といっていい。
ただ、“死に方”についての見方は、津村さんのお年では仕方ないかもしれ
ない。いや、私が年を重ねて自然に受け入れている死生観かもしれないが、
これから津村さんの考えが深まるのをゆっくり見てみたい気もするのである。
もちろん、正解があるとは思っていなけれども・・・
まず、自己啓発本のように受け取る読者もいるかもしれないが、そうした本につきものの...
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(17人)
7. つまらない住宅地のすべての家
津村 記久子‖著
双葉社 2021.3
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
津村さんのトークショー終了後のサイン会で私がサインしていただいたのが
「つまらない住宅地のすべての家」だ。私がかぶっていた帽子を一瞥され「そ
の帽子。。。」と呟かれながら、サインの他に為書きならぬ「為絵」?も書
いてくださった。変な顔をした絵だ。
この時は未読だったのでこの絵が何かわからなかったのだが、すでに読んだ
方から、これはリンゴでしょうと教えてくださった。
読んだあとこの絵を見て、うん、リンゴの顔だと確認したものの、変な顔だ
し、なぜリンゴなの?としばらく考えたのだが、こじつけで、一応の理由ら
しきものを発見した。
この小説に描かれる食べ物はそれぞれ大切な役割を担っているように見える。
登場人物たちのある内情を端的に表しているのだ。例えばある青年の食べる
“雑巾みたいな味のするトースト”。不穏なことを目論んでいる彼の胸の内
がそれとなくわかる。印象的なのが“揚げそば”だ。刑務所から脱走した犯
罪者(女性)がこの住宅地に向かっているらしいという情報を得た自治会長
が、その脱走者が現れるのを監視するため住宅地の住人に声をかけて老夫婦
の家に集まる。普段はお互いに交流がない住人たちは、はじめはぎこちない
のだが、老夫婦がもてなしてくれた揚げそばが美味しくて、自然に打ち解け
ていくのだ。その微妙な変化がうまく描かれている。
で、りんごだが、女性脱走者が入院している彼女の父親に会ったとき、病室
の冷蔵庫にあったのがこのりんごである。脱走の目的のひとつを果たした
彼女は、「次の機会」のためにりんごを食べずにいたのだが、終盤、知人で
あった住人のもとにそのりんが渡り、知人の母親がきれいに洗って食べるの
である。どうってことのない描写であるが、知人の胸の内が伝わってくる。
思いついて花言葉を調べてみた。花の実にも花言葉があるとは知らなかった。
りんごの実の花言葉は“誘惑”!
住宅地図を見返しながら読むって、最初は戸惑ったが、次第に楽しくなった。
数年前に出た『ディス・イズ・ザ・デイ』は力作だと思うが、
併せて津村さんの“進化”の表れであることは間違いないと思う。
津村さんのトークショー終了後のサイン会で私がサインしていただいたのが「つまらない...
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(8人)
8. ふしぎ駄菓子屋銭天堂 17
廣嶋 玲子‖作 jyajya‖絵
偕成社 2022.4
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
数年前に図書館のスタッフの方に薦めて頂いて以来、続刊の刊行を楽しみに
している。
紅子さんの存在感は圧倒的だ。銭天堂に仕返しを目論む教授の暗躍に、読者
の子供たちはきっとハラハラしているだろう。紅子さんに完敗したたたりめ
堂のよどみさんが消えてちょっぴりさびしい思いしたものだが、どうやら
またぞろ悪事を企んでいそうで、これからの展開が見ものである。
数年前に図書館のスタッフの方に薦めて頂いて以来、続刊の刊行を楽しみにしている。紅...
図書
(10人)
9. 現代生活独習ノート
津村 記久子‖著
講談社 2021.11
unofficial ファン倶楽部 さんの評価:
本書が発売された直後、地元の図書館で津村さんのトークショーが開催され、
参加した。ナマ津村さんを拝見するのはなんと12年ぶり。そう、芥川賞受
賞作の『ポトスライムの舟』のサイン会で初めてお会いして以来となる。
変わらない部分(たとえばファッションの趣味?とか)と、どうしても隠せ
ない貫禄のようなものを身に着けていて、とても楽しいひと時だった。
本書は次の8つの短編を収録する。
「レコーダー定置網漁」
「台所の停戦」
「現代生活手帖」
「牢名主」
「粗食インスタグラム」
「フェリシティの面接」
「メダカと猫と密室」
「イン・ザ・シティ」
各編の主人公はすべて女性。。
いやぁ~、皆さんとにかく疲れている。イライラしている。理不尽に困惑し
ている。普通の女性ならあのプチプチをつぶすことに没頭したり、ショッ
ピング、ランチ等でストレスを解消するだろうけど、作者の着眼点はとても
変わっている。「粗食インスタグラム」。タイトルの通り「粗食」をひたす
らインスタグラムにアップするが、なんとつい最近のネットニュースで「粗
食弁当」、要するに、こりゃなんだ!?としか言いようのないみすぼらしいお
弁当をアップするのがあって、結構共感(癒し)を得ているのだ。「現代生
活手帖」のあの便利なロボットは、AIの恐るべき進化で実現できても不思
議ではないとこまできている。
作品全体を通じて、女性の疲れを癒す、あるいはストレスの原因をやりす
ごすのにこんな方法があってもいいし、どんなに変わっているように見えて
も、あなただけの方法を見つけ、発見すれば、少なくても当分は「やってい
けるよ」と声をかけてくれる。
小説だから少しは誇張・デファルメはあるが、すっと心に響くものがあると
したら、それは津村さんの、大上段ではない、ほのかなリアリティーに裏打
ちされているからだと思う。読後、それらの小さな声を聴き、積み重ねてい
るうちに、心の深いところに確かな声となって読者に届くもの。。。それが
津村さんのあたたかい心からのエールなのである。
余談だが、現在(2022年5月)新聞に連載されている小説、とてもいいです
よ!!津村さんの代表作になる予感がする。皆さん、乞うご期待(^^♪
本書が発売された直後、地元の図書館で津村さんのトークショーが開催され、参加した。...
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