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レビュー一覧 (46件)
しゅうちゃんさんの投稿レビュー/甲斐市立図書館
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(4人)
21. 暴君
シェイクスピアの政治学 岩波新書 新赤版 1846 スティーブン グリーンブラット‖著 河合 祥一郎‖訳
岩波書店 2020.9
しゅうちゃん さんの評価:
最高権力者の心に宿る矜持と巣食う不安。最高権力者は、最高権力者がゆえに常に孤独である。自らの地位を危うくすることには誰よりも神経質で、その不安が抑えきれないほど強くなれば、暴君となる可能性が高まる。最高権力者には、権力にすり寄ってくるものたちが多く出て、その追従は、権力者に自信と自己満足をもたらす。ただ、それは躓きの石でもあり、自らを最高権力者にしてきた冷静な観察力と判断力を失わせることにつながる。権力をえる過程で行使した手段は、その強みを知るがゆえに、自らの権力を奪う有力な手段であるとの認識をもつ。暴力で地位を奪ったものは暴力を恐れ、権謀術数で地位を奪ったものは権謀術数をおそれる。強みが自縄自縛となって、権力失墜の崖に自らを追い込んでいく。シェイクスピア研究の大家が、シェイクスピア作品を解説しながら暴君の姿を追う。
最高権力者の心に宿る矜持と巣食う不安。最高権力者は、最高権力者がゆえに常に孤独...
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(22人)
22. じんかん
今村 翔吾‖著
講談社 2020.5
しゅうちゃん さんの評価:
「神も仏もない!」。そのことを体現し、心の叫びとしてもった人間の人生に拓けるのは修羅の道。「将軍(足利義輝)を弑し、主君の三好長慶を殺し、奈良の大仏殿を焼いた」。乱世の梟雄、天下の大悪人と言われた男は、千利休の師である武野紹鴎の高弟で、茶の湯の名人、「平蜘蛛」の茶釜という名物を愛し、安土城の手本となった芸術性高い多聞城を築いた男でもあった。あの織田信長を二度裏切りながら二度許された男。見ていた世界は同じではなかったか。最期は、平蜘蛛の茶釜とともに自爆したとも言われる男。享年67歳、彼こそ「見るべきほどのものは見つ」の一生だった。悪人ではなかった松永久秀をあざやかに描いた書。
「神も仏もない!」。そのことを体現し、心の叫びとしてもった人間の人生に拓けるのは...
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(1人)
23. KGBの男
冷戦史上最大の二重スパイ ベン マッキンタイアー‖著 小林 朋則‖訳
中央公論新社 2020.6
しゅうちゃん さんの評価:
父親も兄も妻もKGBのスパイというスパイ一家に育ちながら、敵対するイギリスのMIT6の二重スパイになった男がいた。金や女で「転ぶ」スパイが多い中で、彼は確信犯。西欧的教養を身につけ、ハンガリーやチェコの弾圧を見て憤り、自らの道を選択した。二重スパイのリスクは極めて高い。判明すると、拷問のうえの死はまぬがれない。様々な情報合戦、スパイ追放のやりとりの中で、消去法から疑いをかけられ、魔の手がせまる。彼に待ちうけていた未来とは?
その報告は、サッチャーが日常的に眼にし、冷戦下のソ連と西側の衝突回避に貢献、あのジェームス・ボンドももらったという勲章を、英女王から授与されたという二重スパイ。信念にもとづき行動したことには悔いはなかったにせよ、友を裏切り、家族とも別れ、孤独な日々を過ごさざるをえなくなった彼の人生は、果たして幸福と言えるものであったのか。彼の心に去来したものは…。事実は小説より奇なり。諜報活動や脱出劇は、スパイ小説より面白い。
父親も兄も妻もKGBのスパイというスパイ一家に育ちながら、敵対するイギリスのM...
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(2人)
24. 「グレート・ギャツビー」を追え
ジョン グリシャム‖著 村上 春樹‖訳
中央公論新社 2020.10
しゅうちゃん さんの評価:
トム・クルーズ主演の「ザ・ファーム 法律事務所」、ジュリア・ロバーツ、デンゼル・ワシントン主演の「ペリカン文書」など、自らの弁護士経験を生かした法廷小説の名作が多いジョン・グリシャム。そのジョン・グリシャムが描く、弁護士の出てこない新作ミステリー。
フィッツジェラルドの原作「グレート・ギャツビー」等の生原稿の行方を追いつつ、書店経営や稀覯本取引の世界を描く。
翻訳はあの村上春樹。ポーランドを旅していた時、街の書店で本書に出会ったという。村上春樹のあとがきを読むと、あなたも、この本に手を出してしまうはず。
トム・クルーズ主演の「ザ・ファーム 法律事務所」、ジュリア・ロバーツ、デンゼル...
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(14人)
25. 人新世の「資本論」
集英社新書 1035 斎藤 幸平‖著
集英社 2020.9
しゅうちゃん さんの評価:
人間たちの活動の痕跡が地球の表面を覆いつくした年代。それが人新生(ひとしんせい)の時代。経済成長が困難になり、経済格差が拡大し、環境問題が深刻化している。
経済成長を図りつつ、環境危機を乗り切ることはできない。環境危機に立ち向かいつつ、経済成長を抑制する唯一の方法は、脱成長型のポスト資本主義に向けて大転換すること。市場原理主義のように、あらゆるものを商品化するのでもなく、ソ連型社会主義のようにあらゆるものの国有化を目指すのでもない。第三の道としての<コモン>は、水や電力、住居、医療、教育といったものを公共財として、自分たちで民主主義的に管理することを目指す。
人間が環境危機を乗り切り、「平等で持続可能で公正な社会」を実現するための唯一の選択肢が「脱成長コミュニズム」。脱成長コミュニズムの5つの柱は、①使用価値経済への転換。使用価値に重きを置いた経済に転換して、大量生産・大量消費から脱却する。②労働時間の短縮。労働時間を削減して、生活の質を向上させる。③画一的な分業の廃止。画一的な労働をもたらす分業を廃止して、労働の創造性を回復させる。④生産過程の民主化。生産のプロセスの民主化を進めて、経済を減速させる。⑤エッセンシャル・ワークの重視。使用価値経済に転換し、労働集約型のエッセンシャル・ワークの重視を。
晩期マルクスの思想に活路を求めての提言。世の中を変えていくことは不可能ではない。3.5%の人々が変わると社会は変わっていく。ミレニアム世代(1981年~1995年生まれ)・Z世代(1990年代後半生まれ)に読んでほしい書。
人間たちの活動の痕跡が地球の表面を覆いつくした年代。それが人新生(ひとしんせい...
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(2人)
26. 家族のあしあと 続
椎名 誠‖著
集英社 2020.10
しゅうちゃん さんの評価:
椎名誠が小学生から中学生になる頃の家族のお話。あとがきに「本当の話を書いていく。できるだけ、誇張も矮小化もせずに、記憶や記録や身内の誰かの話を聞きながら書いていく」と書かれているように、私小説。場所は、千葉の湾岸地域、今はディズニーランドや大きな会議場のある場所になっているが、時は1950年代、戦後の復興期で戦争の傷跡が残る。家族は大家族だが、家族の誰かは戦死しており、戦争で傷ついた人や戦争未亡人も多い。TVはまだ限られたところにしかなく、プロレスの力道山の活躍に拍手をおくった日々。まだ何もない海辺の町のお話。嘘偽りない私小説だからこそ、そこには哀しい話も多い。その後の、ユーモアと笑いにあふれた椎名ワールドとはやや違う世界。椎名誠も後期高齢者、良きにつけ悪しきにつけ「老い」を感じさせる掌編。物悲しくも、ほんのりやさしさが感じられる。椎名誠が、最期に語り、遺したいものは?
椎名誠が小学生から中学生になる頃の家族のお話。あとがきに「本当の話を書いていく...
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(3人)
27. 武漢日記
封鎖下60日の魂の記録 方方‖著 飯塚 容‖訳 渡辺 新一‖訳
河出書房新社 2020.9
しゅうちゃん さんの評価:
「一つの国が文明国家であるかどうかの基準は、高層ビルが多いとか、クルマが疾走しているとか、武器が進んでいるとか、軍隊が強いとか、科学技術が発達しているとか、芸術が多彩とか、さらに、派手なイベントができるとか、花火が豪華絢爛とか、おカネの力で世界を豪遊し、世界中のものを買いあさるとか、決してそうしたことがすべてではない。基準はただ一つしかない。それは弱者に接する態度である」
本書は、武漢に住む女性作家が、新型コロナウィルスによる都市封鎖2日後から、封鎖が解除されるという決定がされた日までの60日までを、ブログで綴り続けた日記。未知の新型コロナウィルスが蔓延し、人々は恐怖の中で、閉じこもる。医療崩壊が起こり、献身的に治療に携わっていた医師や医療従事者が、次々と斃れていく。現在進行形の日記だからこそのリアル感が満載。「ヒトからヒトへの感染である」という医者の発信がありながら、それに誠実に対応せず、責任をとろうとしない行政や病院の経営責任者に対する叱責には、心の底からの怒りがこもっている。行政による言論統制の厳しい社会、SNSでの誹謗中傷が強い中での発信だからこそ、作家の気迫・覚悟が伝わってくる日記。
「一つの国が文明国家であるかどうかの基準は、高層ビルが多いとか、クルマが疾走し...
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(4人)
28. 無敗の男
中村喜四郎全告白 常井 健一‖著
文藝春秋 2019.12
しゅうちゃん さんの評価:
中村喜四郎は、社会の受けとめは既に過去の政治家となっていた。40歳にして戦後生まれ初の閣僚となり、42歳で建設大臣となり、田中角栄になぞられる形でいずれは総理と評され、政治の表舞台を闊歩していた。ただ、それがゆえ、今から四半世紀前の1994年ゼネコン汚職疑惑に絡んであっせん収賄容疑で逮捕され、約10年の裁判の結果、懲役1年6ケ月の有罪となり、投獄され、国会議員の職も失った。
ただ、政治家中村喜四郎は死ななかった。裁判中も刑事被告人の身で選挙に出て当選を続けるとともに、投獄され国会議員の職を失った後の逆風の選挙でも当選。負知らずの14回連続当選。彼が選挙で無敗なのは、その選挙活動にあった。選挙活動というと、資金集めでパーティをしたり、企業や団体の組織的支援をえたり、SNSやブログで発信したり、冠婚葬祭の儀式や地域の催しをくまなく回ったりが想定されるが、中村喜四郎はこれらを一切しない。彼が行っているのは、地道な戸別訪問・地域回りと、活動報告。ただ、そのレベルは他の政治家が到底まねができないほど非凡。地域回りは毎週土曜日と日曜日の2日間、朝7時半から夕方6時まで10時間駆け巡り、選挙区の全市町村を2週間で回りきる。テープレコーダーは一切使わず、すべて肉声で政治的主張を発信。これを初当選から40年以上休まず続けている。選挙期間中も、自らオートバイに乗り、12日間で150ケ所以上を演説行脚。もう一つは、国政報告会。月に1~2回、50人から100人規模で国会見学ツアーを実施、政策について時間をとって演説した後、カラオケ大会などで盛り上げる。余興の司会も自分でやり、合間に有権者の声を丁寧に聞いて終わる。終了後は、電車で議員宿舎に帰る。「大臣までになった人間がここまでやる」。中村喜四郎は、自分を律する力が並みではない。自ら決めたルーティンは必ずやりきる。それは、まさに「百人回峰行」にも匹敵する。
疾風に勁草を知る。苦難にあってはじめて、その人の節操の堅さや意志の強さが分かる。中村喜四郎は、天国も地獄も見てきたその政治家の経歴を生かし、今、野党共闘の舞台を準備。政治家として最後の務めを果たそうとしている。最近中村喜四郎が出ているTVを見たが、政治の状況・社会の状況を、メモを一切見ることなく、数字、年月日を正確に、とうとうと話をす姿に感心させられた。その志は、強いものがあり、空きそうもない扉をこじあけようとする気迫を感じる。政治家とは何か、政治活動とは何かについて、あらためて考えさせられる書。
中村喜四郎は、社会の受けとめは既に過去の政治家となっていた。40歳にして戦後生...
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29. 夜と霧
新版 ヴィクトール E.フランクル‖著 池田 香代子‖訳
みすず書房 2002.11
しゅうちゃん さんの評価:
強制収容所、そこは偶然が人の生死を分ける不条理な世界。そこでは、人は名前をもたない番号でしかない存在となる。いつどうなるか、いつまでこの状態が続くのか、無期限の暫定的存在。そういう状況におかれ、かつ知る人もいない場におかれた時、人の「心」は耐えることができるのか。アウシュビッツを含め約2年半の強制収容所での心理学者の実体験の記録。極限状況下でのユーモアとアパシー。それがあって、生物としての人間は淘汰されず、生き残る生命力を与えられている。「生きることに意味はあるか」「精神の自由とは何か」、根源に迫る問いを発する名著。
強制収容所、そこは偶然が人の生死を分ける不条理な世界。そこでは、人は名前をもた...
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(2人)
30. ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか
酒井 大輔‖著
日経BP 日経BPマーケティング(発売) 2020.6
しゅうちゃん さんの評価:
ワークマンという会社を知らない人がいても、吉幾三のTVCMの「この町で暮らそう 君が住む町で 行こうみんなでワークマン」の歌の会社を、知らない人は少ないと思われる。そのワークマンは、この2年ほどで、「作業服の専門店」から大きく変貌を遂げている。
ワークマンは、2018年9月新業態「ワークマンプラス」出店以来、アウトドアショップに変貌、それまでの既存店平均の2倍売れ、初年度売り上げ目標を3ケ月で達成。2019年の「ヒット予測ランキング1位」に選定され、実際その年のヒット商品ベスト30の1位に選出された。店舗数はユニクロを抜く約870店まで増加、売り上げも1000億円の大台を突破。5年で社員年収100万円アップを宣言・実現。フランチャイズチェーンの加盟店の契約更新率99%と、コンビニとは格段の違いの信頼を勝ち取っている。新型コロナウィルスの影響で、ユニクロやしまむら含めて同業者が苦戦している中で、まさに独り勝ちの状況。
そのワークマンは、何が変わったかというと、売り方を変えただけだという。でも、本当に売り方を変えただけで、2倍売れるようになったのだろうか。答えは本書を読んでいただくことにして、アンバサダーマーケティング、メーカー中心のVMI型のサプライチェーン構築等、ワークマンの挑戦的な取り組みを知ることができる。
新型コロナウィルスで、消費は低迷し、確実に事業淘汰が進む。椅子取りゲームが過熱化する中で、特徴のない平均的な会社は生き残れなくなる。これからの企業が目指す道を示す好著。
ワークマンという会社を知らない人がいても、吉幾三のTVCMの「この町で暮らそう...
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