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レビュー一覧 (16件)
たけがわさんの投稿レビュー/新ひだか町図書館
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11. あるクリスマス
トルーマン カポーティ‖著 村上 春樹‖訳 山本 容子‖銅版画
文芸春秋 1989.12
たけがわ さんの評価:
村上春樹さん御用達の正当派アメリカ文学。
クリスマスに対するアメリカ社会の特別な思い入れが伝わってくる。
ディケンズの「クリスマスキャロル」(英国だけど)や、映画「ホームアローン」にも共通するように、クリスマスは「慈悲と寛容」を思い起こす日だ。
一人一人のちょっとした優しさが、ちょっとした奇跡を起こす。
本作でそれを如実に表しているのが、主人公バディに、(サンタからではなく)父からプレゼントされる「おもちゃの飛行機」だ。当初、バディは自分のためにその飛行機を操縦(イメージ)する。
でも、最後にその飛行機が向かった行き先は、父だけじゃなくて、バディ自身にも奇跡を起こす。
言ってしまえば、すごくベタなクリスマスストーリー。
だが、王道ゆえ、多くの人に読んで欲しい作品になってる。
挿し絵もすごく綺麗だし、クリスマスプレゼントとしてもかなりおすすめの一冊。
(図書館で借りた本は贈れません)
他にも村上春樹さんの作品のレビューをいろいろ書いています。
ブクログーたけがわの本棚
http://booklog.jp/users/cascadebook?tag=%E6%9D%91%E4%B8%8A%E6%98%A5%E6%A8%B9&display=front
村上春樹さん御用達の正当派アメリカ文学。クリスマスに対するアメリカ社会の特別な思...
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(6人)
12. スプートニクの恋人
村上 春樹‖著
講談社 1999.4
たけがわ さんの評価:
三角関係、かなわぬ恋慕。
「こころ」から「裏切り」を取っ払って、村上春樹風の味付けをしたのが本作、という印象。
スプートニクはロシアが実際に打ち上げた人工衛星だ。
スプートニク号をはじめ、多くの人工衛星は自力で宇宙を飛んでいるわけえではない。
ロケットで威勢良く打ち上げられたあとは、慣性力と地球(と月)の引力を頼りに同じ軌道をぐるぐる周るだけだ。
物語では、登場人物たちを、人工衛星になぞらえている。
でも、スプートニク号(をはじめ多くの人工衛星)もいつまでも宇宙にはいられない。
最後には地球の引力に負け、高度を下げはじめる。
スプートニク1号は打ち上げから92日後、(かわいそうな)ライカ犬をのせた2号は162日後に大気圏に再突入して燃え尽きている。
地球から離れた(ようにみえた)登場人物たちは、いつまで宇宙にいるのだろうか。
そして、再突入したあとは、地上に軟着陸できるのだろうか。
余韻の深い一冊。
他にも村上春樹さんの作品のレビューをいろいろ書いています。
ブクログーたけがわの本棚
http://booklog.jp/users/cascadebook?tag=%E6%9D%91%E4%B8%8A%E6%98%A5%E6%A8%B9&display=front
三角関係、かなわぬ恋慕。「こころ」から「裏切り」を取っ払って、村上春樹風の味付け...
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(1人)
13. 雨天炎天
ギリシャ・トルコ辺境紀行 新潮文庫 村上 春樹‖著
新潮社 1991.7
たけがわ さんの評価:
旅行記というのは、作者がひどい目にあえばあうほど、おもしろくなる。
特に村上氏の旅行記はそれが顕著だ。
(村上氏の旅行記は他にもあるけど、ひどい目にあわないでおもしろいのは、おいしい料理を食べられているときと、マラソンを走っているときくらいだ)
タイトルからして大変さがにじみ出てる。
「雨天」は、たった3泊4日の旅なのに、雨の中、険しい山道を半ば遭難しながらさまよってヘトヘトになったギリシャ正教の聖地アトスへの巡礼期だ。
「炎天」は、3週間かけて灼熱で、車の運転は荒くて、ゲリラに囲まれてたばこをせびられて、ホテルで水を飲めば下痢をして、ノープロブレムと言われれま問題だらけで、「もう一度そこに行きたいかといわれれば、今のところ僕の答えはノーだ」というトルコの一周旅行の記録だ。
さて、これだけ気の毒な旅行記だというのに(旅行した当事者たちはともかく)読んでいるほうは、不思議と自分もアトス、そしてトルコに行きたくなる。
アトスの修道院で固いパンと冷めた豆のスープを飲みたくなるし、トルコのチャイハネでトルコ人のおしゃべり攻撃に耐えながら日記を書きたくなる。
なぜかと思えば、村上氏の(ユーモアあふれる)筆致により、村上氏が感じた当地の「空気」が活き活きと表現されているからだ。
そして、その「空気」を「リアル」に感じることが、旅行の醍醐味だと、村上氏は述べている。
その旅行感そのものを村上氏と追体験したくなるのだ。
ギリシャ正教の人もそうじゃない人も、トルコでヴァン猫を見に絨毯店に入りたい人も入りたくない人も、いちど読んで損はない一冊。
(なお、僕はそうまでしてトルコには行きたくない)
他にも村上春樹さんの作品のレビューをいろいろ書いています。
ブクログーたけがわの本棚
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旅行記というのは、作者がひどい目にあえばあうほど、おもしろくなる。特に村上氏の旅...
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(2人)
14. 走ることについて語るときに僕の語ること
村上 春樹‖著
文藝春秋 2007.10
たけがわ さんの評価:
「走る小説家」こと村上春樹氏のランニングに関するエッセイ(いや、そんなキャッチフレーズがあるのか知らないけど)。
ライフワークとしている年1回のフルマラソン出場、さらにそれだけでなくウルトラマラソン(100km)やトライアスロンなど、自分に苦痛を与える長距離競技に出場するなかで感じていることを、小説に負けず劣らずの軽妙かつシックな口調で表現している。
村上氏が走るのは、もともとは健康のためだ。
ただ、20年以上のランナー生活を経て、走ることそのものの価値を見いだしている。
「ただ走る」ことで「無心」を得ている。
これは、禅宗でいう「只管打坐」と同じ発想だ。
「僕は走りながら、ただ走っている。僕は原則的には空白の中を走っている。逆の言い方をすれば、空白を獲得するために走っている、ということかもしれない。」(第1章)
しかも、村上氏は、「どうしても生じる雑念」についても語っている。
そして、その上で感じ入ったのは、村上氏はその雑念さえも受け入れている、といいうことだ。
「そのような空白の中にも、その時々の考えが自然に潜り込んでくる。当然のことだ。人間の心の中には真の空白など存在し得ないのだから」(第1章)
坐禅に取り組んでいる者にとって、この言葉は自分たちが(坐禅の中で)感じていることを、ものすごく的確に表現しているように思える。
坐っている自身すら存在しなくなることが坐禅の目標のひとつだ。だが、空白になるなんてことはない(できるのは悟りを開いたときだ)。
坐禅に取り組む者が皆、感じていることだ。
だが、こうした「禅的な迷い」まで著した言葉は、坐禅の本では滅多にお目にかからない。
それを、ランナーである村上氏が、表現してくれている。
心が晴れた思いだ。
もちろん、ランナー目線でみたほうが、より得るものは大きいだろう。
走ることについて、新たな視点を示してくれる、全国の「お一人様ジョガー」(いや、そんな言葉はあるのか知らないけど)にもぜひ読んで欲しい一冊。
他にも村上春樹さんの作品のレビューを書いています。
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「走る小説家」こと村上春樹氏のランニングに関するエッセイ(いや、そんなキャッチフ...
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(1人)
15. ターン
北村 薫‖著
新潮社 1997.8
たけがわ さんの評価:
(売れない)銅版画家・森真希は、7月のある日の15:15、交通事故にあう。もうダメか、と死を覚悟したが、気がつけば、彼女以外だれもいない世界で、前日の15:15に目を覚ます。以降、15:15で記憶以外のすべてがリセットされる世界で<ターン>を繰り返す彼女だったが、ある日、鳴らないはずの電話がかかることで、大きな転換を迎える。
タイムリープものって、「なぜ時間を繰り返してしまうのか」が大きなポイントとなる。たいていのSF小説は、その説明に時間をかけ、読者も納得のがちがちのサイエンス理論を展開する。
が、この作品は、そのあたりの説明が実にさっぱりしている(納得行かない読者のために、筆者が小説外で付記をするほどだ)。それもこれも、読者のターゲットが圧倒的に女性だからだ。
ターンしているのと大差ない、いつも変わらない毎日を過ごすガンバッテル女性たち。存在意義がない彼女たちが、自分らしさを見つけるのはなんなのか。
主人公・真希にとって自分らしさの証が、銅版画だ。物語のラストで、彼女は百合をモチーフにした(おしゃれ感満載の)銅版画を作成する。
凛とした女性の代名詞ともいえる百合をモチーフにしたことが、がんばる女性への最高のエールとなっている、というわけだ。
等身大の女性目線のほんわかとした語り口は、もちろん多くの人々が読んでも心地よい。
(ハードさがほしければ「オール・ユー・ニーズ・イズ・キル」でも読めばいい)
同作者の「時と人」三部作の他の作品も読んでみたくなる一冊。
他にも小説のレビューを書いています。
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(売れない)銅版画家・森真希は、7月のある日の15:15、交通事故にあう。もうダ...
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(10人)
16. 火星の人
ハヤカワ文庫 SF 1971 アンディ ウィアー‖著 小野田 和子‖訳
早川書房 2014.8
たけがわ さんの評価:
火星探査ミッション中に災害に巻こまれ、幸か不幸か生存してたった一人、火星に取り残された主人公。
助けもこないし、水も食料もおまけに酸素までもそんなにない。
確実に人が来るであろう次の火星ミッションは4年後。
彼はその日まで生き延びることはできるのか?
手に汗握る宇宙サバイバルが描かれているます(主人公のキャラと文章はユルいけど)
こりゃもう一巻の終わり、といった中で、限られた資源を最大限生かして、生存の道を探ります。
先述のジャガイモ栽培に始まり、酸素の確保、水の生産etc
一見、「趣味の園芸」っぽいストーリーが続きますが、それ以外はいたってハードSF。
特に、地球との通信手段を確保するために彼がとる行動は、現代の宇宙ファンにとっても拍手喝采です。
物語が進むにつれ、主人公だけでなくNASAのスタッフの奮闘も強調されます。
「限りある資源を最大限生かす」がサバイバルものの醍醐味ですが、主人公だけでなくNASAスタッフまでも、ありとあらゆるものをいたるところからかき集めて彼の救出に取り組む姿が、映画「アポロ13」を超えるスケールで繰り広げられます。
新しい星でうまくやっていけるかな。
遠い空の向こう、君は何を思うの。
たぶんできはずって思わなきゃしょうがない。
どこかのワンルームのディスコみたいになっちゃいましたが、チャレンジ精神とあきらめない心に感動する、宇宙ファンのための作品です。
マッドデイモンって誰?って人にも、かなりおすすめ!
他にも小説のレビューを書いています。
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