自分の努力ではどうしようも出来ない、月経前症候群の美紗。
突然なんの前触れもなくパニック障害になってしまった山添。
他人には理解されづらい症状を、お互いに補いながらの会話の
優しさが染みる。

懐が深く思いやりのある社長と、年配ではあるけれど
とても素敵な仲間たちと若い二人の社員との交流が、ほんわかとして
心地良いお話。
病状はゆっくりでもよくなってくれるように願う。
そして若い二人の未来に希望があることがうれしい。

『でも、夕日は必ず朝日になることを、今の俺は知っている』と
2年間パニック障害で苦しんできた山添はようやく夜明けが
近いことを実感できるまでになった。
一方自分ではコントロールできない強度のＰＭＳで苦しむ藤沢。
お互いに補いながらなんとなく惹かれあってゆく藤沢と山添。
優しく思いやりに溢れた社員６人の会社は二人に希望をもたらす。
瀬尾まいこの本はホンワカさせてくれるなぁ。

「本屋大賞でも取れそうな作品」というレビュータイトルにするつもりだったが，よく考えてみると，本屋大賞受賞第一作だった。といっても，前作を読んでいるわけではないが，読んでいる最中，涙腺が緩くなっていた。精神的にハンディキャップをもっていると思っている登場人物同士が，はじめは反発し合いながら，だんだん，助け合っていく。読んでいく最中に二人を応援してしまう。大変読後感の良い作品だった。

　著者の初めて読んだ「傑作はまだ」同様にかなり極端な内容と思いますが、声を出して笑ってしまうほどかなり面白かった、もう少し先まで読んでいたい作品でした。