戦後ハリウッド、１９６４年生まれのマチルダは
映画の特殊効果に魅せられて、特殊造形師となるが、
やがて視覚効果やＣＧへと、映画界は変貌していく。

現代の技術が進化し続け、リアルを追い求めるヴィラも
クオリティーターとしての才能があるがゆえの藻掻き、苦悩する。
映画の世界観が昔から現代と続き進化していく様子が、丁寧に描かれており
長編でありながら、飽きずに興味深く読めた。
映画も大好きなので、とても満足のいく多幸感で本を閉じた。

相反する立ち位置に置かれがちな特殊造形とCG技術。たくさんの取材に裏打ちされた時代の違う二人の女性は製作にのめり込み、悩み、あがき、涙しています。
人からの評価に右往左往しながらも、信頼する人からの安心できる言葉で自分を取り戻す。自己実現のために非常に人間らしい生き方だと思います。
ストーリーや演じる人の表現力、画像の美しさはもちろんだけど、映像技術や効果で得られる感情も映画の醍醐味。実在の映画のエピソードもたくさん散りばめられています。
今も自分だけのX、いや、ナイ=ナイを作り続けるマチルダ、そんな生き方もあるのですね。