子門さんのブックリスト / 筑前町図書館

図書
貸出可能
(1人)
181. カトリと眠れる石の街
東 曜太郎‖著 まくらくらま‖装画
講談社 2022.9
子門 さんの評価:
1885年4月、スコットランドはエディンバラでおこった「眠り病」の謎を
解明するべく活躍する二人の少女のお話です。
ハイランド農民の娘でエディンバラ下町の金物屋に養女としてひきとられたカ
トリオナ(通称、カトリ)、ロンドンでも裕福な家庭の子女エリザベス・オー
ルデン(通称、リズ)通常だったら相まみえるハズのないこの二人が、ひょん
なことから知り合い、手を組んで怪異な事件に立ち向かいます。
おそらくは続編が予定してあるのだと思いますが、本巻ではカトリ視点でもっ
て事の経緯が語られています。エディンバラの下町に突如として蔓延した「眠
り病」は、病状を発すると老若男女を問わず寝たきりとなり、意識もほぼなく
してしまう奇病です。原因不明で、医者も為す術がありません。
自分の父親が「眠り病」にかかったリズから協力を求められたカトリでしたが
養父であるジョシュもまた同じく意識不明の状態になってしまいます。かくし
て二人はコンビをくみ、奔走することになるのですが・・・l。
リズもそうですが、カトリもまたいろんなモノを抱え込んだ存在です。自分を
ひきとってくれたジョシュ、エリーの養父母に恩を感じ、家業である金物屋を
もり立てていこうとする一方、並外れた知識欲と優れた知性でもって、凡夫で
ある一生が似合わない感じ。カトリを知る少なからぬ人々がそう思っています
が、だからといって疎外されることのないのは、彼女の人柄でしょぅ。
そんなカトリのまわりの大人たちもまたそれぞれに立派です。養父母を初めと
して、カトリに助言する教区学校のミス・モース、エディンバラ博物館のハミ
ルトン博士ら、年長者として適切なアドバイスをしてくれます。とくにハミル
トン博士とのやりとりなど、学問のあり方とはかくあるべし、そんな気さえし
てくるぐらいです。(「マナドッグ・ムンヴァイル」に関するハミルトン博士
の考察は、学識者としての作者自身の考えの反映でしょう)ですが、今回エデ
ィンバラの街を襲っていた怪異は、残念ながら正統な学問、科学では通用する
シロモノではなかったワケで、でもってリズとカトリの存在が必要となってき
たわけです。
本書の中で、作者はいろいろ「遊び」をしかけているようです。冒頭、「宝
島」の作者、ロバート・スティーブンソンの名前が出てきていますが、リズと
カトリが「眠り病」の実態を調べるために患者の家をまわっていく途中、、そ
の内の一件、「測量士のチャールズ・ドイル」に行き当たります。むろんコレ
はかのコナン・ドイルの実の父親です。時系列でいうと、医師を開業したもの
のヒマをもてあましたドイルが、売れもしない小説を書いている最中です。シ
ャーロック・ホームズ物語が誕生するのは、この事件から数年後となります。
それと、カトリが博物館のなかでハミルトン博士に声をかけられる直前にみい
っていた「虎の毛皮」、たしかインドにて英国の名家の軍人が退治したとの説
明があったと思いますが、もしかするとホームズの仇敵の一人、セバスチャン
モラン大佐・・・そんな「裏設定」があったかも?
これも、作者の茶目っ気でしょうか?

追記
この9月末日、シリーズ第2作「カトリと霧の国の遺産」が刊行されました。
カトリが博物館に見習いとして雇用された翌年のお話です。
新キャラも加入、そして意外なゲスト・スターも登場してますますパワーアッ
プした内容になっています。よろしければ、ぜひご一読を・・・!
1885年4月、スコットランドはエディンバラでおこった「眠り病」の謎を解明するべ...

図書
貸出可能
(4人)
182. 東京の子
藤井 太洋‖著
KADOKAWA 2019.2
子門 さんの評価:

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(0人)
183. シンデレラの謎
なぜ時代を超えて世界中に拡がったのか 河出ブックス 105 浜本 隆志‖著
河出書房新社 2017.6
子門 さんの評価:

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(0人)
184. かけらが語る地球と人類138億年の大図鑑
ミニ ミュージアム‖著 ジェミー グローブ‖著 マックス グローブ‖著 縣 秀彦‖日本語版監訳 小林 玲子‖訳
河出書房新社 2022.10
子門 さんの評価:

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(1人)
185. 図書館司書と不死の猫
リン トラス‖著 玉木 亨‖訳
東京創元社 2019.5
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186. 若き日の哀しみ
海外文学セレクション ダニロ キシュ‖著 山崎 佳代子‖訳
東京創元社 1995.7
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187. 死者の百科事典
海外文学セレクション ダニロ キシュ‖著 山崎 佳代子‖訳
東京創元社 1999.2
子門 さんの評価:

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(1人)
188. 一冊でわかるロシア史
世界と日本がわかる国ぐにの歴史 関 眞興‖著
河出書房新社 2020.10
子門 さんの評価:

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(0人)
189. カレル・チャペック短編集 [1]
カレル チャペック‖著 田才 益夫‖訳
青土社 2007.12
子門 さんの評価:

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(1人)
190. わたしは大統領の奴隷だった
ワシントン家から逃げ出した奴隷の物語 エリカ アームストロング ダンバー‖著 キャサリン ヴァン クリーヴ‖著 渋谷 弘子‖訳
汐文社 2020.12
子門 さんの評価:
アメリカ初代大統領、ジョージ・ワシントンが偉大な政治家であることはいう
までもない。そのあたりのことは、例えば「アメリカ大統領物語」(猿谷要編
新書館)の最初のページ、「ワシントン、ジョージ」の項目を読めば理解でき
るとおもう。劣勢の植民地軍を率いて戦い抜いたカリスマ性、独裁を否定して
民主国家の樹立を志した先見性など、論者によっては「時代に冠絶した」との
形容をつける研究者もいてもおかしくはない。
しかしながら、そんなワシントンも本書の主人公、オーナ・マリア・ジャッジ
の立場からみると、ずいぶんと印象がかわってくる。等身大のワシントンがみ
えてくるというか、本書は非・神話化の作業の成果というべきかもしれない。
 本書はオーナという黒人女性の伝記という体裁をとっているが、おそらくは
彼女自身が書き残したモノなど殆どないのではないかとおもう。
本書にも引用されているが、オーナの晩年、彼女の来歴を紹介した新聞記事
「グラニット・フリーマン」(1845年5/22付け)により、彼女の生涯
がクローズ・アップされたのではないか。在りし日の猿谷要氏は、その著作の
中にオーナへの言及がないところをみると、彼女の存在を知らなかったのでは
ないかとおもう。
 オーナ自身が書き残したモノなど殆どないと思われるが、おそらくは彼女に
インタビューした記者、あるいは聖職者らにより記録されたらしいオーナのコ
トバが紹介されている。オーナの「主人」であったワシントン夫人、マーサに
ついて語った「夫人は祈祷書を読んでいましたが、それはお祈りとはよべませ
ん」というもので、云った本人に自覚があったかどうか定かではないけど、夫
人への痛烈なまでの批判となっている。
本書の末尾に、オーナ関連の年表が掲載されている。「無い物ねだり」との自
覚はあるけども、この年表に入れてほしかったファクターのひとつに、例えば
エイブラハム・リンカーンの存在がある。オーナ生存中は、リンカーンは下院
議員だったハズで、その両者をどう時代のなかで位置づけるのか?
そんな視点からの考察もまた興味ふかいモノがあったのではないか。

年少者とかに限らず、大人にも読んでもらいたい作品である。
アメリカ初代大統領、ジョージ・ワシントンが偉大な政治家であることはいうまでもない...
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