帯にもある元気がでる仕事小説。いろいろな立場の人たちが、ぶつかり合いながらも一つのアニメ作品を作り上げていく。はじめは、アニメ業界での派遣社員の話かなと思っていたが、全然違います。仕事の中身へのアプローチは少し浅いかなと思うけれど、アニメへの愛情に包まれた本で、楽しく読めた。

読みながら、なんでもっと早く手を伸ばさなかったのだろうと悔しくなった。後半になるにつれ、もうわくわくドキドキが止まらなくて、先が読みたくて仕方なかった。
一見すると理解できないような人も、よく知り別の角度からみるとそれぞれに愛を持って仕事をしている。でてくる人たちみんなサイコー！誰推しとか選べない！とても爽快で、キュンとくるお仕事小説。

　2015年本屋大賞で三位。所謂クリエイターものである。このジャンル、漫画で言うなら古くは島本和彦「燃えよペン」、最近なら山口つばさ「ブルーピリオド」や大童澄瞳「映像研には手を出すな！」辺りが思い浮かぶ。
　このジャンルに共通の傾向として、主人公の情熱が描かれるという点があると思うが、本作も例外ではなく、全力で目標に向かってゆく登場人物達の姿勢が心地よい。また、アニメ業界を丹念に取材したと思われる舞台背景の確かさも、物語の骨格を太いものとすることに成功している。読後感も爽やかな良作である。