阿刀田高さんのエッセイに「ヌーッとしたもの」（「犬も歩けば」（幻冬舎）収録）がある。
　「長編小説は、ページごとの面白さも必要だが、読み終えたとき、作品の背後からヌーッと何か力強いものが現れてくるようなところがなくてはならない。小説のモチーフともいうべきものがひたひたと押し寄せて来なければ、よい作品とは言えない。」
　「とっぴんぱらりの風太郎」（万城目学　文藝春秋）。週刊文春に2年に渡り連載された。2014年の本屋大賞5位ということで、図書館から借りて読んだ。半分ほどまではあまりのボリュームに何度も読むのをやめようかと思った。後半3分の1ほどからは引き込まれて、一気に読み終えた。ラストシーンでなにかが私の琴線に触れて、読後は涙、涙。
　「ヌーッとしたもの」に心をゆさぶられた作品でした。