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教育は何を評価してきたのか
岩波新書 新赤版
1829
岩波書店 2020.3
本田 由紀
∥著
(4人)
蔵書数: 1冊
貸出数: 0冊
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竜王図書館 <1012389274>
貸出可 / 2F棚8/新書 / /S/372/ホ/ / 帯出可
詳細情報
ISBN
4-00-431829-3
13桁ISBN
978-4-00-431829-3
書名ヨミ
キョウイク ワ ナニ オ ヒョウカ シテ キタ ノカ
著者ヨミ
ホンダ ユキ
叢書名ヨミ
イワナミ シンショ シンアカバン
分類記号
372.106
価格
¥840
出版者ヨミ
イワナミ ショテン
大きさ
18cm
ページ数
8,253p
一般件名
日本 教育
抄録
日本社会が息苦しい原因は、教育をめぐる磁場にあった。能力・資質・態度という言葉に注目し、戦前から現在までの日本の教育言説を分析することで、格差と不安に満ちた社会構造から脱却する道筋を示す。
著者紹介
1964年生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。同大学大学院教育学研究科教授。専攻は教育社会学。著書に「若者と仕事」など。
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教育は何をもたらしてきているか
(2020/06/10)
しゅうちゃん/甲斐市立図書館
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PISA(国際学習到達度調査)等、国際的な調査では、日本人は高い評価をされているのに、賃金水準は、他国との比較でもその評価に見合うものとなっていない。加えて、本人の意識が「職務を十分にこなすスキルが足りない」という自己評価になってしまっている。社会的な役割発揮意識が、諸外国の中でも目立って低いのも大きな特徴。どうして、そうなってしまっているのか。
著者は、<「能力」「資質」「態度」という言葉が、社会と人々をがんじがらめにしていることが、多くの問題を生み出してしまっている>、ということを仮説として提示。このことがどうして異常なのか、それはどのようにしてできあがってきたのか、そのがんじがらめになった縄をほどいていくにはどうすればいいのかについて、根拠を示しながら解説。
著者によると、日本は、「能力」にもとづく選抜・選別・格付けがされる「垂直的序列化」と、特定のふるまいや考え方を全体に要請する圧力である「水平的画一化」の二つの要素が際立っており、「水平的多様化」の要素が少ないという。これは日本に特有の状況。諸外国では、「良い市民であるために何が必要か」という質問に「意見の違う人の考えを理解すること」という回答や、民主主義における権利の質問に「政府のすることに異議がある時それに従わない行動をとること」という回答が、「とても重要」とする回答が多いのに、日本は、その回答に対する評価は、欧米14ケ国中最低になっている。日本は、「異質性や批判を排除する空気」が際立って強い。
日本が欧米と比較し新型コロナウィルスの死亡者率が少ないこと(アジアの中では多いが)について、副総理は「民度のレベルが高いから」と発言し問題視されたが、ただ、その論調は、「諸外国の民度が低いと評価したと受け取られかねない」との批判が多かったが、問題の本質は違うはず。同調圧力が強く、強制力を行使しなくても、行動を引き出せるのは、為政者にとっては都合がいい。かつて「ナチスの手口を学んだら」と発言している政治家の発言。「民度のレベルが高い」という評価について、何をもってその評価とし、その評価は真に妥当なのかについて、突っ込むべきだったはず。国民の主体的な行動自粛は、新型コロナウィルスの流行の抑制ということではプラスに作用したが、底流にある「同調圧力」の負の面についても、眼を向けていないと、この先危ういことになってくる。社会の空気が、SNSもあって画一化の方向に加熱しがちな傾向は注意が必要で、こういう時こそ、多様な見方を大切にすべき。
垂直的序列化と不可分な言葉は「能力」、水平的画一化と不可分な言葉は「資質」「態度」。著者は、現状の社会の中で、「能力」「資質」「態度」がもっている弊害を考慮し、できる限り使わないこと、使う時は注意して使うことを提起している。特に、社会が「危機」を迎えている状況だからこそ、受け止めるべき提起と考える。本田由紀氏は、東大大学院教授で、教育社会学者。固い部分は残るが、一般の読者に向け提起。一読の価値あり。
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しゅうちゃん/甲斐市立図書館
著者は、<「能力」「資質」「態度」という言葉が、社会と人々をがんじがらめにしていることが、多くの問題を生み出してしまっている>、ということを仮説として提示。このことがどうして異常なのか、それはどのようにしてできあがってきたのか、そのがんじがらめになった縄をほどいていくにはどうすればいいのかについて、根拠を示しながら解説。
著者によると、日本は、「能力」にもとづく選抜・選別・格付けがされる「垂直的序列化」と、特定のふるまいや考え方を全体に要請する圧力である「水平的画一化」の二つの要素が際立っており、「水平的多様化」の要素が少ないという。これは日本に特有の状況。諸外国では、「良い市民であるために何が必要か」という質問に「意見の違う人の考えを理解すること」という回答や、民主主義における権利の質問に「政府のすることに異議がある時それに従わない行動をとること」という回答が、「とても重要」とする回答が多いのに、日本は、その回答に対する評価は、欧米14ケ国中最低になっている。日本は、「異質性や批判を排除する空気」が際立って強い。
日本が欧米と比較し新型コロナウィルスの死亡者率が少ないこと(アジアの中では多いが)について、副総理は「民度のレベルが高いから」と発言し問題視されたが、ただ、その論調は、「諸外国の民度が低いと評価したと受け取られかねない」との批判が多かったが、問題の本質は違うはず。同調圧力が強く、強制力を行使しなくても、行動を引き出せるのは、為政者にとっては都合がいい。かつて「ナチスの手口を学んだら」と発言している政治家の発言。「民度のレベルが高い」という評価について、何をもってその評価とし、その評価は真に妥当なのかについて、突っ込むべきだったはず。国民の主体的な行動自粛は、新型コロナウィルスの流行の抑制ということではプラスに作用したが、底流にある「同調圧力」の負の面についても、眼を向けていないと、この先危ういことになってくる。社会の空気が、SNSもあって画一化の方向に加熱しがちな傾向は注意が必要で、こういう時こそ、多様な見方を大切にすべき。
垂直的序列化と不可分な言葉は「能力」、水平的画一化と不可分な言葉は「資質」「態度」。著者は、現状の社会の中で、「能力」「資質」「態度」がもっている弊害を考慮し、できる限り使わないこと、使う時は注意して使うことを提起している。特に、社会が「危機」を迎えている状況だからこそ、受け止めるべき提起と考える。本田由紀氏は、東大大学院教授で、教育社会学者。固い部分は残るが、一般の読者に向け提起。一読の価値あり。